2011-11-27

〔超新撰21を読む〕佐藤成之の一句 野口 裕

〔超新撰21を読む〕
土と空の両方が
佐藤成之の一句……野口 裕


十月の青空転ぶなら前へ   佐藤成之

前半の小題が「二十世紀」、後半の小題が「二十一世紀」。作者の所属結社は、東北に位置している。『超新撰21』が発行されてからほぼ一年が経とうとして、新作句群のため、すでに新しい小題が用意されていることだろう。上掲句は、「二十一世紀」から選んだ。

作者は自身の立脚点を、「みちのくは光棲む国桃青忌」と詠んでいる。『奥の細道』にある、「象潟や雨に西施がねぶの花」は、1804年に起こった地震によって景色が失われた。記録された言葉が、その景を伝える。風景は時空に支配された事物の限定された配置でありながら、言葉によって記録され記憶の伝承とともに窯変を引き起こす。

その力の源泉は、「転ぶなら前へ」の姿勢だろう。時にこうした言葉には、鼻白むこともままあり得る。どちらかと言えば、私はそうした感想を二六時中持つ方である。だが、そう言わずにはおれない時がしばしばあることも、理解はする。「雨ニモマケズ」との言葉も、同じ風土の中から出てきた。

転んだ地点から、土と空の両方が見えている。


『超新撰21』・邑書林オンラインショップ

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