〔週俳11月の俳句を読む〕
宇宙と魔法
麻里伊
流星嵐長針短針重なりぬ 笹木くろえ
「しし座流星群」が最接近したのはつい最近のこと。予想時間が違ったためうっかり見過ごしてしまったのが残念。次は33年後らしいから、生きている間は見ることが出来ないと思うと宇宙の壮大さが思われる。
時計の長針と短針は進む速さが違うため、位置はズレて行くのだが、確実に一時間に一回の重なりを生じる。地球接近の周期を持つ「流星嵐」との配合は、長針短針の接近離脱を繰り返す時計も太陽系地球人間の生んだ一つの小宇宙なのだと思わされる。「重なりぬ」が抒情となり、やけに美しく響いて来る。
ブローチに光りが飛んで冬の森 宮本佳世乃
ワンピースに付いていたガラス玉のブローチは、丸い七色の光りを反射した。着ている私にはブローチは見えないけれど、私の前方にチラチラ動く丸い輝きが嬉しく、そのワンピースを着た日には王女様にでもなった気分になった。ある日バスに乗った時、その光りが突然消えた。落としたのだ。魔法が解けたようになったワンピースととともに、私も普通の人になった。
冬の太陽、森の木漏れ日、ブローチの輝き、それぞれの光りを感じる。「冬の森」に静かに潜んでいる命の息吹のごとき「光り」が、胸に飾った小さなブローチに行き着く。「ブローチの」として外に向わず、「ブローチに」として内に向ったところに特異性がある。
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2011-12-11
〔週俳11月の俳句を読む〕麻里伊
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1 comments:
>時計の長針と短針は進む速さが違うため、位置はズレて行くのだが、確実に一時間に一回の重なりを生じる。
ちょっと、違うかも、、、
位置がズレる分だけ時間も余計にかかるのでは?
つまり、
12時の次に重なるのは
1時間後の1時ではなく、
1時5分を少し過ぎた辺りです
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