〔週俳12月の俳句を読む〕
行儀の良い句
久留島元
すみずみへ光を撒きて掃納 阪西敦子
行儀の良い句だな、と思ったのが第一印象。
発想自体はさほど新味があるとは思わない。いわば「掃納」という季語そのものを詠んだ句、といってよいだろう。
だからこれが「光を差し込ませる」とか、「光を浴びせ」とかであれば、上から目線で鼻持ちならないが、「撒く」というのはそれほど嫌味がないように思われ、かろうじていいバランスを保っているように思う。
量が少ないぶんだけ上品というか、素直に受け入れられる気がする。
年末の句だが、こういう明るい句を読めるお正月は、気持ちがいい。
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1年ぶりに「週刊俳句」の「12月の句を読む」原稿依頼をいただいた。
何句かを選んで鑑賞を書き始めていたのだが、先週の「週刊俳句」247号を読んで、ちょっと気が変わった。
他の鑑賞文が、各作者を見渡してまんべんなく選ぶ、という形式だったので、今回は一句に絞ってみようと思ったのである。
思ったのだが、やっぱり俳句を読む楽しみはいろいろな俳句に出会うことだと思うので、鑑賞ぬきで印象に残った句をいくつか。
冬に生まれて冬が大好き着ぶくれて 原雅子
鼬出て降つてきさうな空模様
椅子に老人窓に青年クリスマス
鍵盤のぽつぽつ沈む冬の星 高勢祥子
半音が好きで梟また啼けり 渋川京子
あざやかな平手打ちなり冬夕焼
年の夜も川を渡つて帰るかな 阪西敦子
はるばると涸滝に来てしまうかな 岡野泰輔
斜陽こそ冬至南瓜の色ならめ 太田うさぎ
クリスマスツリーの下の革財布
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