月天子 Gallery 新春蔵出し[77コレクション]
ご挨拶
えー、このたび、当Galleryの歌仙倉庫に長らく埋設展示しておりました歌仙より、77の短句のみ抜き出したらどーだろか企画展を思いつきましたけれども、もとより歌仙における付け句(発句に対しては平句)とは、前句、前々句への付き離れを意識して、流れのなかで書かれたものであり、一句独立させて読むものではないし、なかんずく77の短句ともなれば、ましてや果たすべき役割のために作られて一層独立性は薄くなるともいえ、そこへもってきて連衆諸氏も、まさか単独全裸で世に晒すなどとは夢にも思っておりませんでしょうから、したがって、何をしやがる、というお怒りの声もあろうかなど再々愚考いたしますれども、そこはまあ、万障お繰り合わせいただきまして、大笑いということで済ませていただきますれば、何卒。
(文責・月天子 Gallery主人・なむ烏鷺坊こと佐山哲郎)
烏鷺坊盲選
●第一輯●
ばかと云つては交はすくちづけ ゆかり
巴里の風船売りの腰つき 苑を
柄杓の底を凩が抜け 祐天寺
リビドーときに油のごとし ぽぽな
無音で流るスタッフロール 藤幹子
四股踏む音の朝な夕なに 六番町
麦青むゆゑいま麦畑 なむ
●第二輯●
高野豆腐をめざす青年 ゆかり
シューマン聴くによき腕枕 篠
坊主千人薬喰ひする 祐天寺
田螺と思ふ的の真ん中 天気
嫌といふほど姿見磨く ぽぽな
写真の中の我と我が貌 志
なりにけりとはちと澄ましすぎ なむ
●第三輯●
葡萄の種がいま胃のあたり 天気
狐に向けし細き銃口 唖々砂
樽に頭蓋のごとき白菜 なむ
水滴の中ものがたりふる 令
旦那が通ふ角の吉野屋 gororin
ニライカナイへ向く春日傘 ヒッピィ
あすは海市に祭あるらし 十四郎
●第四輯●
八重山諸島とんがつて来る ヒッピィ
ヨン様の手に雁瘡のあと 志
案山子相手に謎掛けをして 篠
思ひの丈を書く再生紙 登季
第四惑星年代記補遺 なむ
肉のごとくに砂場濡れたる 等
はるばる明日の見ゆるぶらんこ 淡水魚
●第五輯●
御神体ゆゑ拝む石棒 百花
かまぼこ板に姓名を書く 東人
コホンと言へば尾崎放哉 天気
マスクしたまま仕舞湯に入る 振り子
待てど暮らせど餅ふくらまず ヒッピィ
二頁前の挿絵に戻る なむ
のびたテープで聴くストーンズ 宙虫
●第六輯●
兄がをんなに変はる鏡台 天気
こんなところの黒子言ひ合ふ 六番町
泣く子も黙る表面張力 ヒッピィ
三方ヶ原に赤旗がたつ 東人
首吊るによき松の枝ぶり 志
分教場へ帰る蝙蝠 なむ
春風生まるスキップのたび 振り子
●第七輯●
二十五時から先の顛末 天気
毛玉取つたり蒟蒻煮たり 勝之
ツケ利く店に残す恋文 gororin
ハマーショルドの日記をめくる 東人
向かひの家は子ども七人 等
汝が魂のためのモルヒネ なむ
コンクラーベに往きて還らず 志
(以上。七七・四十九句發遣浄焚)
●参考●
月天子Gallery歌仙倉庫
資料室
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2012-01-22
月天子 Gallery 新春蔵出し[77コレクション]
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