2012-02-05

金原まさ子101歳お誕生日 インタビュー

金原まさ子さん
101歳お誕生日
インタビュー


聞き手:「週刊俳句」上田信治


金原まさ子さん(句集『遊戯の家』)が、この2月4日に101歳のお誕生日を迎えられるということで、「週刊俳句」がお話をうかがいに参上しました。

駅まで、金原さんのお嬢さん・植田さんに迎えに来ていただき、小久保佳世子さん、柴田千晶さんとともに会場となる和食店に到着したとき、金原さんは、新聞に載った「ハッテン場」の記事と「田中慎弥」さんの記事の切り抜きを眺めていらっしゃいました。

そして、上田にと、坂本龍一出演のラジオ番組のカセットテープ、「音楽専科増刊 8ビートギャグ」(懐かしい!!)などなどを、お譲り下さいました。



上田 坂本龍一さんのファンでいらっしゃるとうかがったんですけど、それは、やっぱりYMOのころからですか?

金原 違うんです。「戦メリ」(大島渚「戦場のメリークリスマス」)からなんです。

あの映画で、はじめてああいう世界を目の当たりにして、本当に美しいと思って。もともと私の心の中にあったものではあったんでしょうけど、「目覚めて」しまったんですね。それからずっと目覚めっぱなしで、家には、本とかビデオとか、坂本コレクションが、いっぱいあるんです。

上田 ということは、坂本さんのことは、美しい男性、としてお好きなんでしょうか。

金原 「アナザーカントリー」とか「モーリス」とか、ああいう映画がありましたでしょ? ああいうのが好きなんですねえ。

上田 金原さんは「腐女子」でらっしゃる。

金原 はい?

上田 美しい男性たちの世界が好きな女性たちが、そう自称してるんです。特に、マンガの世界で。

金原 そう! 私、萩尾望都の全集も持ってます。『ポーの一族』や『トーマの心臓』には涙しました。

上田 萩尾さんは、腐女子の神ですね。ああいう美意識の正当性を定立した人、と言われています。そういえば、「街」のエッセイでは、三島由紀夫と堂本正樹のロマンスに触れていらした。

金原 それも、ヨノイ(「戦メリ」での坂本龍一の役名)以降なんですけどね。堂本さんの書かれた小さな本の中で、三島に手をほめられたから、毎朝、熱いお湯に手をひたした、という話が書かれていましてね。



上田 そのエッセイの時代のお話からうかがいたいんですが、銀座のカフェや、ダンスホールが遊び場だったそうですが、そういうところは、お小遣いで入れたんですか。それとも、女性は払わなくてよかったとか。

金原 いえいえ! その中に出て来る男性達は「今日は、ぼく、ゲル(お金)ないんだ♡」なんて言うような人たちですから。

上田 ドイツ語由来の学生用語ですね。

金原 はい。そうしたら「よろしいのよ」って言って、私たち女が全部はらってあげてましたから。みんな慶応ボーイでね。お金をテーブルの下で渡すと、それをもって、彼らがレジへ行くんです。

上田 へー、モボ・モガってやつでしょうか。ご実家は麹町だったそうですけど、ご裕福でらしたんですか?

金原 普通のサラリーマンの家でした。父は、三和信託(銀行)の不動産の仕事をやっておりましたので、家にもいろんな業者が出入りして、暮らし向きは派手でした。そういう家の中で、私は、ひとり遊離して、部屋で一人っきりで本ばかり読んでました。

上田 夢野久作ですか。

金原 はい。「新青年」てご存じ?

上田 探偵小説雑誌ですよね。1980年代に、復刻本が出たりしてちょっとしたブームになりました。

金原 「苦楽」はご存じ? 同じ傾向の、もっとひどい…。

上田 猟奇的な?

金原 そう!本屋が、当時はつけでしたけど、ウチのものは誰も明細なんか見ませんから、そういう本が買い放題で。ああいう妖しい世界に一人でひたってましたの。

上田 あの、まさ子さんの初期の作品「河骨のかげでうっすら目をひらく」「火あぶりの火の匂いして盆踊り」(『冬の花』)などには、夢野久作の猟奇歌の影響があるのではないですか。

金原 そう!それは、ぜったいありますね!他に好きだったのは、初期の乱歩とか、龍膽寺雄、川端康成の「片腕」とか……。

上田 今でいう「サブカル少女」でいらしたんですね。学校にそういうの、読んでらした方って、他にいらっしゃいました?

金原 私は友達が一人もいませんでした。だって「少女の友」とか「令女界」とかを読んでるような人たちで、私もそういうものは読みましたけど、とても話ができません。

上田 銀座で遊んでらしたのは、どういうお友達だったんですか?

金原 女学校を卒業して、飯田橋にあった大きな料理学校に入ったんですけど、そこで知り合った女友達と、ダンスの世界に触れて、私は男性なんか全く知りませんか ら、まあ、こんなふうにして一緒に踊るんだ、っていうので、わーっと夢中になってしまって、フワーッとへんなのに引っかかってしまった(笑)。

料理学校と言ったって、着物着てお太鼓締めてその上にかっぽう着でしょ。お料理を習ってると「金子(旧姓)さんお電話ですよ」って、教室に呼び出しが来るんです。行ってみると、あの人から「今日、学校終わったら、待ってるから」って。そういう学校でした。

上田 不良じゃないですか(笑)。

金原 あら、娘の前でこんなこと、教育に悪い(笑)。



上田 すてきなお父様だったんでしょうね。

植田 おしゃれでねえ。

金原 ゲーリー・クーパーに似てた。もてて、もてて。ダンサーと問題を起こしたりして。

上田 おやおや。ダンサーって、どういうダンサーですか。

金原 新橋のダンスホールの人。ダンスホールのシステムって、ご存じ? ホールにダンサーやダンス教師がいて、チケットを買うんですね。1回踊ったらチケットを一枚渡すんですけど、だれも一枚ずつなんか渡さない。20枚なら20枚買って、2、3回分しか使わないで全部渡すとか。

バンドにリクエストして好きな曲をやらせたりして、お金を使うもんだから、もててしまって。戦争が終わったという開放感もあったと思います。それで、すてきなダンサーがいて、そういうことになってしまって。

でも、おかしいのは、私、主人の恋人がちっとも憎めないんですよ。全くこちらにお金を入れない時期もありましたけど、遺産が多少はありましたし、月に一度くらい古物商の人が「近くに来たから寄ります」とか言って来ては「この絨緞、もうよろしいんじゃないですか」って、買っていったりするので、なんとかやっておりました。

そうこうしているうちに、あの人は「なんにも言わずにぼくの全てを、受け入れてくれる?」とか言いながら、イバッて戻ってきて(笑)。

上田 さっきの「今日ゲル無いんだ」も、そうでしたけど、そこまで自分が愛されることに自信をもってる男性って、どうなんでしょう(笑)。

金原 その時代の男の人は大体そうではないのですか。よく知りませんけど。へらへら笑いながら「ぼくは幸せだなー」って言ってましたよ。77歳で亡くなるんですけど、入院して「目が覚めると、君がそばに座っていてるから、ほっとするよ」なんて、言うようになりましたのよ。だから、あなたも、お気をつけあそばして(笑)。

上田 えー(笑)今のお話は、どこが教訓だったんでしょう(笑)。


右から、金原さん、上田、柴田千晶さん、小久保佳世子さん、植田さん

上田 ご主人は、出征はされなかったんですか。

植田 この人(金原さん)に、お父さんどこか戦地に行ったのって聞いても、知らないって(笑)。

金原 非常召集っていうんですかね、空襲警報があったりすると、かり出されて行くだけ。終戦間際にいちおう召集されてますけど、戦地には行ってないわね。

上田 運が良かったんですねえ。

金原 空襲で実家は燃えましたけど、直には経験してないですしね。群馬に疎開して、空襲警報があると、押入に入って日本文学全集を読んでた。

植田 私のお雛様を持ってきていて、疎開先の人に文句を言われたんですよ(笑)。

金原 そう、お茶碗も先方のものを借りるような生活だったのに、お雛様とかアルバムとか、生活に関係のないものばかり、持ってきていたから。お雛様は、いま、この人の孫のものになってますよ。

上田 本当ですか。東京の人で、それ珍しいんじゃないですか。

植田 そういう人……(笑)。

上田 ご結婚は昭和8年ですか?

金原 えーたぶん、それくらいですね。私、年表に弱くて。

上田 戦後のキャッチフレーズで「昭和8年にもどりたい」というのがあったそうで、景気のいい楽しい時代だったらしいですね。

金原 まあ、そうだったのかもしれません。ちょうど、今日(2月1日)なんですけどね、記念日は。

上田 おお、そうでしたか。



上田 NHKの朝の連続テレビ小説、いつも戦前から戦中、戦後にかけてのお話やってますけど、ご覧になります?

植田 この人、見ないんですよ。私は見てるけど。

上田 経験された時代は、まさにぴったりですのにねえ。

金原 あなた「ミタ」は、見ない方?

上田 「家政婦のミタ」ですか(笑)? すいません、ぼくは見てないです。

金原 あー、やっぱり世界が違う(笑)。あなた(柴田さんへ)、見るでしょ?

柴田 見ます。

金原 そう。小久保さんも見ない人です。

上田 「カーネーション」評判いいみたいですけどね。あ、最近「オールウェイズ三丁目の夕日」なんていう、昭和30年代くらいの映画も、当たってるみたいですけど。

金原 ブログをはじめたら時間がなくて。今を知るのが優先で読みたい本もこんなにたまってますし。ホームドラマよりは刑事物が。「相棒」とかね。

上田 …あの、多少、俳句のお話も、うかがってもよろしいでしょうか?(一同笑)

金原 上田さんが私に俳句の話を聞いてもなんのプラスもありませんよ。ど素人ですから。

上田 いえいえ、とんでもない。まず、お借りした第一句集と第二句集を含む、作品の感想を言わせてください。

金原 上田さん、飲んでいらっしゃる? ハイボールか何か頼みましょうか(笑)。

上田 はい、だいぶいただいています。えー、第一句集『冬の花』は、手堅い自然詠もあり、さきほど触れた奇想もありという句集です。

 『冬の花』 
紅梅に雨降る沖は照りながら   
茸狩へ畳のくらさ踏み出でて
火あぶりの火の匂いして盆踊り
山寺や白萩が咲き火が熾り
 
藁いろの月射している花西瓜
おもしろの世や菜を漬けて小半日
クレソンに水照りはげしき人の恩
逝く年の定かならねど木の根っこ
網膜の赤ながれだす夕花野
鯉の麩を食べて媼に日の永き
         

上田 実景を元にしていても、どこか、実から虚へむかうものが感じられる句が多いです。

金原 私は、いったん見て、目をつぶらないとダメなんです。見たものにとらわれてしまっては絶対ダメで、頭の中ではなんだって出来る、という書き方。

上田 「紅梅に」は、ちょっと秋桜子ばりですね。

金原 ああ、それは、唯一ほめられた句ですね。私「馬酔木」にも二年ほどいましたから。ずっと一句欄か二句欄で。その後、人に勧められて「春燈」に入ったんです。

そのころは、主人が戻っていたものですから、昔の気分になって「花合歓や昼逢ふ紅は薄くさし」なんて句を出していましたら、安住敦 が、そういうのが好きでどんどん上位に上げて(笑)。あとから実は昔の話でと言ったら、安住さん「ホッとしました」なんて言ってましたけどね(笑)。

上田 それまで、だいぶドキドキしてたってことですね(笑)。第二句集『弾語り』は、もう自由に唄いはじめられている、といった印象です。「夏萩の葉のうす青き「豊」の死」なんて尾崎豊の死を詠んだ句が入っていたり、自在で、発想が面白い句が多いです。

『弾語り』
春愁を辿りてゆけば二階かな
失語症さふらんの葉をこまむすび
野茨を自己戴冠す誕生日
七月のころりと皿にたらこかな
あけび食ふ若しやもしやと生きて来て
鳥わたるぱたんぱたんと肉叩き
白い粉匿す白粉花の種の中
針金の輪つかの上の菊の首
錠剤は青が効きさう風花す
次の世がちらつく釜上饂飩かな
         

「菊の首」はヨハネの首ようでもあるし、引っくりかえしの天使の首のようでもある。「釜上饂飩」は万太郎の「湯豆腐」の変奏でしょうけど、もうもうと湯気の 上がる地獄の釜のようでもあり、うどんが白いだけに天国的でもある。「鳥わたるぱたんぱたんと肉叩き」は、説明しがたく好きな句です。


上田 それで評判になった一昨年の『遊戯の家』、 ここで、それまでそれほど目立たなかったエロスの要素が前面に現れてくる。巻頭が「春暁の母たち乳をふるまうよ」ですからね。春ですから、若い母達が、赤 ちゃんを産み育てることまでを含めて、思いっきり官能を楽しんでいる。「母たち」の「たち」がいい。「春暁」も、女性たちの頬の紅潮が見えるようです。HIVで亡くなったデレク・ジャーマンが、原発の見える荒涼とした土地に作った庭をモチーフにした「ガーデン」の連作も素晴らしかった。

『遊戯の家』
春暁の母たち乳をふるまうよ
囀りのごときにふけり神々は
老人の血は酸っぱいと鳴く春蚊
合歓の家毛深い神が出入す
赤いところで氷いちごは悲しんで
夕顔はヨハネに抱かれたいのだな
 「ガーデン」
朴散るたび金貨いちまい口うつし
ああデレクポピーから顔あげるとき
月白く出てニワトコは殺しの木
薄荷油を塗りあってヨハネ・ルカ
・マルコ


金原 それは完全に、ヨノイの影響ですね。

上田 ああ(感嘆)、ほんとうに、坂本龍一の存在は大きかったんですね。エロスという意味で。

金原 坂本さんは最近、政治のほうへ行ってしまって、いい人になっちゃって、おとなしくて、ちょっとつまらないですけどね。たとえば『家畜人ヤプー』、「街」では私たち(柴田さんへ)二人くらいしか読んでないと思うけど。

柴田 はい、読んでます。

金原 あれの分厚い本があったんだけど、このあいだどなたかに差上げてしまって。あなたは「ヤプー」とかは、お読みにならないでしょ。

上田 ええ(笑)読んでないです。

金原 あ とは河野多惠子の「半所有者」、平野啓一郎『日蝕』、町田康、寺山修司。ロックで言えば、プリンスもデビッド・シルビアンもコンサートを見に行っています。そんな人 たちが好きです。田中慎也さんの小説もこのあいだ読んで、すさまじかった。上田さんは「清く正しく美しく」のほうの方ですから、こんなこと 申し上げるのは、恥ずかしいのですけど。

上田 清く…はあ、どこで、そう思われたか、よく分かりませんが(笑)。

金原 私の憧れは、小説家になることだったのですけれど、まったく書けませんでした。瀬戸内寂聴は、万巻の書を読んでも、文章を書けない人というのはいる、ということを言っています。あんなに読んできたのに、まったく文章が出てこないんです。

上田  あの、青山二郎って人はするどいんで有名ですけど、まったく文章の書けなかった人だそうで。なにかテン ションが文章に向いてない、という人もいるんだと思います。

ただ今回、再録させていただく、金原さんの「街」掲載のエッセイも、『弾語り』のあとがきも、散文詩のようで、ぼくはすごくいいと思いました。

金原 はい、うかがっておきます(笑)。

上田 ほんとにほんとですよ(笑)。これも今回再録させていただきますけど、新作「らんno.56」(2012冬号)に掲載された「十七枚の一筆箋」も面白い。

小久保 ブログの句もすごく面白いですよ。

上田 小久保さんのご尽力ですよねえ。

小久保 今日の句の「オムスクトムスクイルスノヤルスクチタカイダラボ春の雪」なんだろうと思ったら、シベリアの地名なんですってね。猫髭さんが、ブログのコメント欄で。

金原 あの方、本当になんでもよく知ってらして。私、小学校で習いました。あなた、習わなかった?

上田  習わなかったですけど(笑)、金原さんがスゴイと思うのは、俳句が変化して発展しているということで。

あの、飛躍するようですが、人間の精神が衰えないとい うことは、人間、死なない!っていうことじゃないですか。これはですねえ、希望ですよ(←だいぶ、酔っぱらってきているようです)。

金原 関悦史さんて、どんな方なのかしら。

上田 いい人ですよー。あんまりエゴというものを感じさせない人ですね。男の人って、すぐ張り合うじゃないですか。そういうのが、あんまりない。言っちゃえば天使みたいな(←酔ってます)。

金原 私のようなものの名前を、期待する人として挙げていただいて、きっと関さんはおモテになるから、めったな人の名前を挙げるとその人が嫉妬されるから、金原とでも書いとけ、と思われたんじゃないか、と(一同笑)。私、悪く悪く考えるんです。

上田 坂本龍一さん以降、これは、という男性はいらっしゃいますか。

金原 坂本さんを越える存在はないですね。

植田 この人が、ひところ言ってたのは、浅野忠信とか。GACKTとか。

金原 ああ、そうそう。小栗旬とかね。

上田 みごとに顔がきれいな人ばっかりですね。ここ(会場となった和食店)の店長さんも、なかなかカワイイんじゃないですか。

植田 イケメンですよね。

金原 はい? ああ、まあ員数には入れておきましょ(笑)。でも、そんなに顔ばっかりでもないんですよ。内田裕也とか、忌野清志郎も、いいなと思いました。清志郎は、坂本さんとずいぶん長くキスする場面がありましたね。

上田 ああ「いけないルージュマジック」の時ですね。なつかしい。沢田研二さんとかは、どうですか。

植田 あ、それは私(爆笑)。

金原 そうそう、この人はね、子育て中にタイガースにはまって、ファンクラブ活動もやっていて。

上田 遺伝ですねえ(笑)。金原さんは「草苑」にいらして、カッコいい女性もたくさん見てこられたんじゃないですか。桂信子さんの印象とかいかがですか。

金原 桂さんは、1足す1が2になる人でした。善人なおもて、が分からない。「善人しか往生はできません、悪人は往生しちゃいけないんです」っていう人でした。宇多 喜代子さんが、遺品整理のとき、机に「歎異抄」があるのを見て、涙が出た、って言われてます。きっと、周囲に、悪人正機はほんとうですって言われて、 悩まれたんでしょう。

私が1足す1は大きな1だ、っていう句を書いたら、1足す1を2にいたします、っていう句を書かれるような方でしたけど。

上田 でも、その宇多さんも、本来「清く正しく」の側の方ですよね。そして最近は「らん」で、鳴戸奈菜さんと。

金原 はい、鳴戸さんに、「あなたは何やってもいいんだから、やりたいようにやらなきゃ駄目よ」と言っていただいて、ほんとに自由にやらせてもらってます。

上田 鳴戸さんも、じつは、とっても「清く正しく」ですよね。

金原 そう。あの方は「青年を見詰む口中に生卵」なんて作られていながら、清く正しい方です。

上田 僕、思うんですけどー(酔)、暗いほうへむかう情熱っていうのは、長い間にダメになることが多いように思うんですよ。だから、金原さんも、本来、明るくて強いかただから、暗い世界、あやしい世界を楽しんでらっしゃるんじゃないですか。

金原 それは、そのとーり! よく言って下さった。それを理解していただければ、私はなんでも言えるんです。私は、書くものそのままのような人間と思われることが、もう嫌で。でも、そこで遊んでいると、癒しがあるんです。救われるんですよ。心が健やかになる。

上田 光が射してると思いますよ。金原さんの句は。

金原 私は、柴田トヨさんや、日野原重明さんのような方を尊敬しています。でも、やっぱり人間が違う。いっしょにされたくはないんです。日野原さんはね、全ての人が許し合えたら戦争はなくなる、なんて、おっしゃっています。

上田 それは、よく言うよ、かもしれないですね(酔)。

金原 あの方は、お体も丈夫で才能もあって、お金もあって「お幸せ」なんです。私が、直接的に幸せになれるとしたら、こんど宝くじが4億6千万円になりましたから、あれが当たれば幸せになれる(爆笑)。

上田 何年、生きられるおつもりなんですか(笑)!

金原 みんなにダイヤの指輪を買ってあげる約束をしています。週刊俳句にも、何千万円か寄付をさしあげますので(笑)。

上田  (笑)それは、大変ありがたいですけど、金原さんは、もう、書きつづけているわけですから。それは、もう日々財宝をね、ぱーっと撒いてるみたいなもんですよ。ですから、ここは、ひとつ、なるべくたくさん生きていただいて。あ、そうだ「百一回までよ老人の縄跳びは」「百二回までよ鞦韆も毬つきも」(『遊戯の 家』)って書かれてたじゃないですか。百一回は、もうクリアしてしまわれたんで、百三回めの句を作っていただいて(笑)。

金原 よかったら、また、桜の咲く頃にでもいらしてください。

上田 はい、じゃあ、百三回目の桜まで予約しておきましょう。

金原 「戦メリ」の演技では坂本龍一よりビートたけしが評価されましたけど、そのたけしが、こんなことを言ってるんですよ。人に「おやすみなさい」っていうのと「ばばあ殺してくそして寝ちまえ」っていうのは、同義語だって。

上田 はい。

金原 それが、私のねらいです。

上田 ああ、なるほど! 本当だ。それこそ悪人正機じゃないですか。いいですねえ!

金原 今日は、上田さんの前ではだかになりました。

上田 いえいえいえ、まだまだ(笑)。ぜひ。また、うかがわせていただきます。

金原 そろそろ大団円? 

上田 はい、今日は、ほんとうに長時間、ありがとうございました。

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