〔週俳1月の俳句を読む〕
往ぬる
五十嵐義知
やまをりとたにをり立つてゐる冬木 生駒大祐
切絵のような風景である。
黒い用紙を木立ちや山小屋の影の部分として切り取り、白い用紙を背景とすると、雪景色の中に木立ちが黒々と浮かび上がってくる。掲出句はイメージを切絵のように浮かび上がらせた。
木の葉が落ちた冬木立の風景。「やまをり」と「たにをり」が、木の枝の節から節へ伸び行く様子を如実に表している。
水鳥なのか流れゆく水なのか 村田 篠
水鳥が流水に流されている。作者が注目しているのは、水鳥なのか、水なのか。
水鳥が水面を流れてきたのではなく、水流が水鳥を流しているのか。
水の渦の中に水鳥が重なって、流れる水になる。流れる水の中から水鳥が現れる。
そのような循環過程なのであろうか。
日の光りまた日の光り鏡餅 上田信治
玄関に置かれた鏡餅に光りがあたっている。格子戸を開け閉めすると、光りが交互にあたる。
玄関の扉を開け閉めすることは、普段の仕種であったのだろうが、その光りの先に鏡餅があったのである。
鏡餅に光りがあたる、それだけの光景であるが、元旦の清新な光りが射しているのである。
胸ふかく呑み込むたばこ初昔 西原天気
胸ふかくというのであるから、ゆったりとした時間の中で呑む煙草であろう。
普段であれば、わずかな時間のなかで、ルーチンのように喫煙をしていたのかもしれない。
去年から今年にかけての束の間の時間を詠んだ句であるが、「ふかく呑み込む」としたことで、短い時間の中にも過ごしてきた時間と来るべき新たな年への感慨が感じられる。
第245号 2012年1月1日
■生駒大祐 うしなはれ 5句 ≫読む
■村田 篠 水鳥 5句 ≫読む
■上田信治 ご町内 6句 ≫読む
■西原天気 胸ふかく 5句 ≫読む
第246号 2012年1月8日
■特集・新年詠2012 ≫読む ≫読む ≫読む ≫読む ≫読む ≫読む
第247号 2012年1月15日
■谷口智行 初 暦 7句 ≫読む
■小林千史 塔 7句 ≫読む
第248号2012年1月22日
■雪我狂流 日向ぼこ 7句 ≫読む
■依光陽子 涯 hate 7句 ≫読む
■矢口 晃 蝌蚪は雲 7句 ≫読む
■山下つばさ ぱみゆぱみゆ 7句 ≫読む
■福田若之 既製品たちと歌ううた 7句 ≫読む
第249号2012年1月29日
■望月 周 冬ゆやけ 7句 ≫読む
■林 雅樹 紛糾 7句 ≫読む
■松本てふこ 遊具 7句 ≫読む
■野口る理 留守番 7句 ≫読む
●
2012-02-12
〔週俳1月の俳句を読む〕五十嵐義知
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿