〔週俳1月の俳句を読む〕
お正月のイコン
西原天気
新年詠より。
寅さんの背広は同じお元日 河野けいこ
正月、寅さんはどこかの神社で仕事をしているのだろうか(よく知らない)。それとも実家の団子屋に帰るのだろうか。そうだとしたら、家族はそれがめでたいのかめでたくないのか(寅さんは帰るたびに問題を起こすと記憶している)。いずれにせよ、あの背広込みで寅さんはイコンとなった。
しんしんとハリマオ忌まで海の旅 佐山哲郎
作者は播磨沖、播磨灘へと旅したのでしょう。播磨は私の故郷なので、あの海の感じはよく知っています。波らしい波もない静かな海を高台から眺めるときなど、歴史以前、神話の時代は斯様な光景だったかと想像が膨らみます。オススメは、遠浅の砂浜を見つけ、引き潮が夜明けか日没なら浜に立ってみることです。黄金色の水とも砂ともわからぬ質感の、一枚の絹布のような水平面が波紋を際立たせつつ眼前に広がります。
一方、「快傑ハリマオ」は1960年4月5日から1961年6月27日まで放映されたテレビドラマ。年寄りの私にもほとんど記憶にありませんが、たしか東南アジアが主戦場のこのヒーロー、播磨灘とどう関連があるのか? むしろ房総の工業団地のそばの草むら、というイメージです、ハリマオは。いや、それは月光仮面か。
と、どうでもいいようなことを考えさせてくれる句は、まちがいなく良い句です。
四色に分かるる家族絵双六 藤 幹子
人生ゲームですね。
≫参考画像
えっ! 七色もある!
いや、この句は、4人で遊んでいるのです。
元旦のかに道楽のこはいかに 三島ゆかり
あの蟹って、動くんでしょう? そりゃ怖いですよ。大きいし。
元日やバイクすべてに銀シート 四ッ谷龍
お節料理には金色がよく使われるようですが(金箔入りの清酒という、どうしようもないシロモノも含め)、むしろ「しろがね」に淑気があるような気がします。
銀のシートの中には銀色のバイク。秘匿による顕示(by 松田修)効果で、オートバイのしろがねの質感が「傾(かぶ)き」の心持ちを伴います。傾(かたむ)いて置かれているし、といった軽口は無用。
第245号 2012年1月1日
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第246号 2012年1月8日
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第247号 2012年1月15日
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第248号 2012年1月22日
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第249号 2012年1月29日
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2012-02-19
〔週俳1月の俳句を読む〕西原天気
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