林田紀音夫全句集拾読 203
野口 裕
目礼の蝶と連れ立つ道すがら
昭和五十四年、未発表句。いかにも春。
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太陽を描く水辺の小学生
昭和五十四年、未発表句。紀音夫らしくない傑作。大きく生き生きと画用紙の上を動く手や腕が見えてくるようだ。「らしくない」という理由で未発表に終わったのだろうか。
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草に寝ていつか十字架その形
昭和五十四年、未発表句。大の字だったか、草枕だったか、いつか十字架になっている我が姿勢。「その形」のだめ押しを嫌ったか。
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先に行く蝶に堂塔火の昔
昭和五十四年、未発表句。蝶の向こうに堂塔が見える。ゆっくりと歩く私は昔を回想している。火のような過去を。
蝶と堂塔と私の間には何の関係もない。同じく、外界の景と私の回想とは無関係である。だからこそ句として成り立つ。と、強弁したくなるような雰囲気があるが、やはり「火の昔」は強引かも知れない。
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2012-02-19
林田紀音夫全句集拾読203 野口裕
Posted by wh at 0:05
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