林田紀音夫全句集拾読 218
野口 裕
点滴のしじまを捉え夜のとばり
病室の窓を翼燈下降する
いつか夜となり病室の窓が鏡
仰臥の天より点滴の尾が垂れる
眠る身に水の暗さの滞る
水の夜を病んでひらたく薄く寝る
夜がそこにベッドの海のながい時間
真夜覚めていて雨音か水音か
昭和五十六年、未発表句。第一句に、「新千里病院へ入院」の詞書あり。以下、十三句が入院中の作と推定できる。引用したうち、後半四句に水のイメージが顕著にある。
昭和五十七年に「海程」と「花曜」に重複発表した「不眠の夜藻のさざめきのいつよりか」がこの頃のピークをなす作であると、当方は判定しているが、その原形がここにある。
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また病んで天界の雨ガラス粒
昭和五十六年、未発表句。退院から出社に至るが、健康体に戻ったわけではないだろう。この頃、窓際族という言葉はすでに一般的だったようだ(→こちら)。
彼がそうだったかどうかは知らないが、句にはそうしたニュアンスが漂う。中七下五は、窓ガラスの雨粒を言っているようにも取れるが、雨をガラス粒と言ったのが工夫のしどころ。
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2012-06-17
林田紀音夫全句集拾読 218 野口裕
Posted by wh at 0:03
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