2012-08-19

松本てふこ 帰社セズ 25句

松本てふこ 帰社セズ 全25句



〔九州篇〕船頭   ≫縦組

山笠を仰いでをれば日雷

峰雲のただうつくしき遥拝所

馬刺てふ看板ありて日の盛り

蜻蛉や小舟より見る小学校

夏柳船頭絶えず喋りけり

でいご咲くみどりに濁る堀の水

内堀と外堀分かれ大西日

夏萩や屈みつつ聞く舟唄も

船頭はバイクで帰り雲の峰

青鷺の有明海へ飛びゆけり



〔アブダビ篇〕トランジット   ≫縦組


八月のインド上空にて眠る

常夏や機体に太きアラブ文字

アブダビ発マンゴー香る機内かな

夏掛の魚くささよ空の旅

冷房やチャドル行き交ふ空港に

夏休機窓一面砂漠なり



ロンドン篇〕
倫敦塔   ≫縦組

大砲の先は河向き青葉冷

夏果ての鴎かぼそく鳴きかはす

鷲鼻の国に来てゐる涼しさよ

老人がクロスワードを解いて夏

緑陰のネルソンマンデラ像を撮る

教会に聖女の名あり立葵

鰯雲倫敦塔を見上げては

ゆさゆさと夏の終はりのライラック

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