2013-06-30

林田紀音夫全句集拾読 272 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
272

野口 裕







近道に海見ながらの法師蝉

近道に日の射すところ椿の実


平成二年、未発表句。何気ない日常の景を季語で言い止める典型的な有季定型の手法の近道二句。ひょっとして遠回りだったのではなかろうか。

 

午後よりの荷役ひととき雨の糸

平成二年、未発表句。ちょっとした荷役を終えての、自祝を象徴するかのような雨。眺めるひとときは至福でもあろう。「雨の糸」は、無季語でありながら、季語と同様の機能を付与されている。紀音夫にとって愛着ある言葉だけに、作家にとって連想の広がる言葉なのだろう。

「渦・三十周年」の詞書あり。記念講演でも頼まれたか。赤尾兜子と林田紀音夫という組み合わせは、何かを語れそうで無理なようでもある。

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