2013-07-21

自由律俳句を読む 3 母 (一) 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 3
(一)

馬場古戸暢


母を詠んだ句には、共感しやすい気がする。自身がマザコンというわけではなかろうが。

母が縮んで老婆  なかぎりせいじ

「縮んで」という表現のためか滑稽さを感じてしまうが、詠まれている内容は母の老いであり、その結果小さくなってしまうという事実そのものである。その現実を、淡々と必要最小限の言葉で詠んでいる。

母のふくらみに眠る  さはらこあめ

私はこの句を、布団にはいって丸まっている母を横目に、自身も床についた様と読んだ。「母のふくらみ」とは、どうにも柔らかく、温かい表現だ。

今夜は母と並んで寝る事きれし母と  荻原井泉水

前書に「母死す二句」とあるので、この句の母が作者に声をかけてくれることはもうないのだろう。明日は焼かれることになる動かない母をきれしというところに、作者の胸中をみる。ちなみに井泉水の母の死関連では、「我顔寄せてこれぞいまわの母の顔」の句もある。

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