林田紀音夫全句集拾読 284
野口 裕
海へ道さくら発光して昏れる
平成四年、未発表句。海へ通じる道、おそらく河口沿いの道だろう。日の暮れてゆく中を桜は発光しているようだ、というような意味合いだろう。生の貴重なひとときを実感している。
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終日雨さくらに髪の白加わる
平成四年、未発表句。桜に自己の老いを重ねたか。
花褪せてさくら擦過の夕まぐれ
平成四年、未発表句。「花」、「さくら」と重ねるのは珍しい。緊張感に満ちた句も良いが、ふと口をついて出たような軽い句も好ましい。花片が触れるか触れないかの軽い蝕感とよくあった句柄だ。
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風わたる陸橋時に落花また
平成四年、未発表句。陸橋は、紀音夫の好むアイテムのひとつで、無季の句の道具立てとして頻出する。ここでは有季。風と落花という常套手段は、句に破綻を生じさせない。無季の句に作り替える下ごしらえか。
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2013-09-22
林田紀音夫全句集拾読 284 野口裕
Posted by wh at 0:10
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