2013-09-22

林田紀音夫全句集拾読 284 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
284

野口 裕





海へ道さくら発光して昏れる

平成四年、未発表句。海へ通じる道、おそらく河口沿いの道だろう。日の暮れてゆく中を桜は発光しているようだ、というような意味合いだろう。生の貴重なひとときを実感している。

 

終日雨さくらに髪の白加わる

平成四年、未発表句。桜に自己の老いを重ねたか。

花褪せてさくら擦過の夕まぐれ

平成四年、未発表句。「花」、「さくら」と重ねるのは珍しい。緊張感に満ちた句も良いが、ふと口をついて出たような軽い句も好ましい。花片が触れるか触れないかの軽い蝕感とよくあった句柄だ。

 

風わたる陸橋時に落花また

平成四年、未発表句。陸橋は、紀音夫の好むアイテムのひとつで、無季の句の道具立てとして頻出する。ここでは有季。風と落花という常套手段は、句に破綻を生じさせない。無季の句に作り替える下ごしらえか。

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