林田紀音夫全句集拾読 287
野口 裕
向日葵のがっくりと海遠くなり
平成四年、未発表句。U字に曲がった向日葵の首に、海が遠くなったと感じる。並の俳句作家の句なら繊細な感覚とほめるところだろうが、やや物足りないのも事実。八月のあの日を念頭に思い浮かべても良さそうだが、句の並びからすると時期がややずれる。素直な感想と取っておこう。
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蟻歩くよろめく松の根は走り
平成四年、未発表句。走り根を横断しようとする蟻の描写。若干の自画像を含むか。「歩くよろめく」と動詞を重ねて畳みかけるところが軽快で、もたもたしながらも動作自体は忙しない点を活写している。
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蛇行して水の流れは雨の中
平成四年、未発表句。運動場あたりの水たまりがジオラマをなす。見ていると大河のようだ。雨が降る限りその景は続く。蛇行に若干の比喩的な効果。
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2013-10-13
林田紀音夫全句集拾読 287
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