13 置炬燵 前北かおる
冬至柚子もらふ到着ロビーかな
凩や塀また塀の城下町
御廟所へ石畳踏む冬至かな
切長の松陰像や冬座敷
ふぐ宿の傘差しくるる仲居かな
ふぐちりのふぐのラップを外しゆく
露天湯へ霜夜の扉押しひらく
灯の果てに寒椿かな露天風呂
明りては細る寒夜の灯台よ
磯辺より椿林へ分け入りぬ
時雨つつ椿林の花辿る
灯台を見て引き返す朝時雨
蜑小屋の自販機灯る時雨かな
常磐木に埋もるる火口山眠る
冬の雨選挙の済みしポスターに
城下より城下へ時雨たる旅を
時雨たる町のプラネタリウムかな
駅頭に蒸気機関車山眠る
ちくわぶの残骸浮いておでん鍋
ストーブや板廊下なる洗面所
塞ぎたる北窓に風しがみつく
草枕電気毛布にくるまりて
もみぢ葉の積もる千本鳥居かな
冬帝を讃へ発電風車群
冬濤の磯に砕けて我が生地
置炬燵四世の孫に対面す
子ら巣立ち孫どち巣立ち冬籠
歳晩の母系の墓所に参じけり
照り翳り照り翳りして冬の浪
水仙や海風に耳ふさがるる
山茶花の雪に塗れてゆけるかな
ぼた雪をはたき落として風神は
前髪を雪の簾にしてゐたる
大雪のマンホールより水の音
吹抜に吊すあれこれクリスマス
襟巻にノートを当てて諳んずる
雪晴の朝一番の登城かな
楠の垂らす雫や雪晴るる
橇に乗せ二人がかりで引きまはす
北風に出づれば天守屹立す
スリッパを履いて登城や底冷ゆる
橋の雪掻いては堀へ投げ棄つる
風花やブルドーザーが土均す
足跡の凍つてゐたる日陰かな
かいつぶり水輪消ゆれば泳ぎ出す
手袋をはづして涙拭ひやる
荒波や小さくなりし鴨の陣
冬菊の日を失へる黄色かな
枯れ尽くす芒の糸に残る棘
旅戻りサンタクロース来る家に
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2013-11-03
2013落選展テキスト 13置炬燵 前北かおる
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1 comments:
13 置炬燵 前北かおる
凩や塀また塀の城下町
ふぐちりのふぐのラップを外しゆく
今を生きている自分をすでにある俳句の規矩のうちにおさめて語る、という課題を、きっとこの人は自分に課している。それは誠実な態度だと思う。
橋の雪掻いては堀へ投げ棄つる
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