2013-11-03

2013落選展テキスト 17過日 すずきみのる

17 過日 すずきみのる

波の穂も丸ぶ湖水や春初め
春の雪届かずたぶの虚までは
淡雪にあらずかもめの糞である
遅霜の胡粉塗しや古タイヤ
コンタクトレンズが痛いいぬふぐり
駅弁は桜サクラの京都駅
脚はクロスに春コート駅に立つ
大屋根に高窓光りミモザ咲く
表札に通り名を添へ諸葛菜
春灯の範疇トイレ使用燈
車窓より水都あまねく花曇
セメントは静かに乾く蝶の昼
山笑ふ採石のあと切り立つも
梅雨の雲ありあまる目を蜘蛛は持ち
青田見て車窓に浅き眠りして
幽霊の手のさま栗の花のさま
ところてん神二柱睦みゐる
草むらに吹き戻されて蛇の衣
炎上の様に雲湧く遠花火
遠雷や時々風の向き変わり
黒白の毛虫の時間伸び縮み
携帯に残す秋立つ日の画像
水底を魚体くたれて去る九月
秋暑き水都に若きコメディアン
ぎす鳴きて廃寺の中に憩ひの場
秋灯下子規の千枚通し見る
捨てらるるはずが案山子を装ひぬ
胴長の犬が落ち葉を咬むところ
細密に詳細に萩咲きにけり
卓上に黒髪あふれ星月夜
秋水や周期表まづHより
贋作のムンクと望の夜を過ごす
お会式桜そこは園児が集ふ場所
ピアノ線なし岩を垂れ秋の滝
秋の駅イスラム服の女走る
砕きつつ歩くどんぐり乾く道
草紅葉なす頂上を盟主とす
紅葉の中に病葉あるあはれ
猪は臭し臭しと畑の嫗
百の群れゐてゆりかもめわらわ顔
四条まで時雨の舌は届かざる
ポインセチア朱をカンバスの芯に打つ
気ぶつせいな方も交へて神集ひ
ウイツグが鞄に覗く神の留守
システムキッチン小鍋に鰤大根を煮て
ひたひたの水にいきていたくないなまこ
冬桜ぼけざくらとは御無体な
雪しまく魁偉なる根の磯慣松
寒風を来て熱すぎる蒸しタオル
白鳥の磔刑のさま星座とす


1 コメント:

上田信治 さんのコメント...

17 過日 すずきみのる

コンタクトレンズが痛いいぬふぐり

ちらちらする騙し絵のうようなオオイヌノフグリの花の青と、目にちくちくする薄水色のコンタクトレンズが、響きあっている洒落た句。「痛い」と「ふぐり」の字が近くにあるところも面白い。

車窓より水都あまねく花曇
セメントは静かに乾く蝶の昼