17 過日 すずきみのる
波の穂も丸ぶ湖水や春初め
春の雪届かずたぶの虚までは
淡雪にあらずかもめの糞である
遅霜の胡粉塗しや古タイヤ
コンタクトレンズが痛いいぬふぐり
駅弁は桜サクラの京都駅
脚はクロスに春コート駅に立つ
大屋根に高窓光りミモザ咲く
表札に通り名を添へ諸葛菜
春灯の範疇トイレ使用燈
車窓より水都あまねく花曇
セメントは静かに乾く蝶の昼
山笑ふ採石のあと切り立つも
梅雨の雲ありあまる目を蜘蛛は持ち
青田見て車窓に浅き眠りして
幽霊の手のさま栗の花のさま
ところてん神二柱睦みゐる
草むらに吹き戻されて蛇の衣
炎上の様に雲湧く遠花火
遠雷や時々風の向き変わり
黒白の毛虫の時間伸び縮み
携帯に残す秋立つ日の画像
水底を魚体くたれて去る九月
秋暑き水都に若きコメディアン
ぎす鳴きて廃寺の中に憩ひの場
秋灯下子規の千枚通し見る
捨てらるるはずが案山子を装ひぬ
胴長の犬が落ち葉を咬むところ
細密に詳細に萩咲きにけり
卓上に黒髪あふれ星月夜
秋水や周期表まづHより
贋作のムンクと望の夜を過ごす
お会式桜そこは園児が集ふ場所
ピアノ線なし岩を垂れ秋の滝
秋の駅イスラム服の女走る
砕きつつ歩くどんぐり乾く道
草紅葉なす頂上を盟主とす
紅葉の中に病葉あるあはれ
猪は臭し臭しと畑の嫗
百の群れゐてゆりかもめわらわ顔
四条まで時雨の舌は届かざる
ポインセチア朱をカンバスの芯に打つ
気ぶつせいな方も交へて神集ひ
ウイツグが鞄に覗く神の留守
システムキッチン小鍋に鰤大根を煮て
ひたひたの水にいきていたくないなまこ
冬桜ぼけざくらとは御無体な
雪しまく魁偉なる根の磯慣松
寒風を来て熱すぎる蒸しタオル
白鳥の磔刑のさま星座とす
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2013-11-03
2013落選展テキスト 17過日 すずきみのる
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1 comments:
17 過日 すずきみのる
コンタクトレンズが痛いいぬふぐり
ちらちらする騙し絵のうようなオオイヌノフグリの花の青と、目にちくちくする薄水色のコンタクトレンズが、響きあっている洒落た句。「痛い」と「ふぐり」の字が近くにあるところも面白い。
車窓より水都あまねく花曇
セメントは静かに乾く蝶の昼
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