2013-11-03

2013落選展テキスト 4佐藤文香 踊る子ども

4  踊る子ども 佐藤文香

今日の手をあつめてすすぐ月の庭
三日月に浅瀬はくだらないところ
雨の日の水澄むことのほんたうに
ともしびのうちの草いろ秋の蝶
店を出てさつきの昼の月の続き
耳に舌入れ森はいつまでもある
猫じやらしその辺の光の重さ
ゆく鳥の目はさきをゆく秋の空
広場落葉音響班に君はゐて
白薔薇とレモンを雑にテーブルに
焼林檎ゆつくりと落ち込んでゆく
ねむるまへいくらも胸の小鳥墜つ
菊日和昨日買つた靴下で駆け寄る
冬晴れて君宛の手紙はすべて君に
初雪の窓や果実の蜜を焦がす
風花やきつく噛み合ふ傘の骨
かたさうにやすむ鳥たち枯木立
声がして師走の街に手をかざす
雪を来て踊る子どもはおほきな子
冬のスイミングスクール帰りに会ふ犬
ブイのまはりはくまなく海や冬の鳥
バス停にゐるよとんびの鳴くを見て
冬の海見せつつ山の芒かな
舟しろく遠くいくつかづつ凍る
冬雲やひらめきあつてよい景色
みづうみのきはをゆく水初明り
深夜早春窓の五つが光りてゐ
オーボエや道のむかうの春の川
ひとりづつ四月のふるへ雨がきて
木の椅子に泪のやうに春の身体
木に花が咲く踝を合はせてみる
末黒野へ罫線入りの紙飛行機
まなざしにちかく照る葉や石鹸玉
立体としての厚揚げ春の月
プラタナス街はいま夕方早め
春深く僕ら窓閉めて横たはる
雨上がり藤は硝子のごとく垂れ
墨をするとき目のうるむ牡丹かな
葉桜にいつの風かがくる狂ふ
朝礼台運ぶ瞳にすこし滝
罌粟の花床屋のまへの溝の蓋
うすい空緑雨は明日新しく
トンネルや窓にわたしが半袖で
蛍消えとなりの人とさはりあふ
干草や笑つておけば愉快な日
夏帽に羊はついてまはるなり
紫陽花や小皿を滑るピーナッツ
雑穀の甘いたべもの夏の月
一寸たたいて干せば乾くよ縞のシャツ
うすばかげろふ次に逢つても笑ふだらう


1 コメント:

天気 さんのコメント...

>干草や笑つておけば愉快な日

この句あたりからハッピーな方向へ。
50句は、すーっと始まり、ふわふわと進み、ぽよよんと幸福感へ。気持ちのよい展開。

笑うのが一番です。

干草がなんとも(物理的に)くすぐったく、小品ヨーロッパ映画なおもむきも。