2014-01-26

林田紀音夫全句集拾読 300 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
300

野口 裕




護符いくつ貼る朝より晴れた空

平成七年、未発表句。千社札を見ての景。護符という言い方に人がそれに託した願いを想起させるものがある。平成八年「海程」発表句に、「日暮れまで人は行き来の千社札」。


水運ぶ十日戎の屋台まで

平成七年、未発表句。神社の境内に、外の路上にと屋台が渦巻くほどに十日戎は賑やかである。もちろん水道が引かれているわけでは無いので、屋台まで人が水を運ぶのであろう。喧噪の中で黙々と(あるいはきびきびと、だろうか)働く人を見つける紀音夫の眼のつけどころは、第二次世界大戦後を生き抜いた生活人のものである。

 

震災の夜へ枕木も兵馬の翳

平成七年、未発表句。「阪神淡路大震災」の詞書き。この句以降の十七句は、すべて震災関連句である。平成八年になってからの発表句の多くも震災関連句であり、制作年が一年遡ると推定される。甲子夫が大きな衝撃を受けたと想像するのはたやすい。

上掲句からは、地震直後に交通網が寸断され、多くの人が線路を伝い歩いたことが思い出される。枕木の上を歩く人に自身の戦争体験を重ね合わせているのだろう。

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