2014-03-09

【週俳2月の俳句を読む】マジ諸行無常だわ 山下彩乃

【週俳2月の俳句を読む】
マジ諸行無常だわ

山下彩乃


妙案のなくて薄氷捨てにけり  加藤水名

朝の水たまりに薄氷ができている。自然にできたものなのに、まっすぐで、薄く、透き通っていて、精巧とすらおもう。眺めているうちにも指の熱で溶けていく。指と指が触れ合う感触に、氷に穴があいたのがわかった。きれいだ、もったいない、けれどなんにも使えない。放った氷はあっけなく割れる。昼になるころには地面の染みになった。

ちいさいころ、とうもろこしを剥いていたときに、金色に輝くヒゲみたいなアレがとても素敵なものにみえて、金色の部分を束にして大事に置いておいた。半日かちょっと見ないうちに、黄金のつるつるしたものが茶色くがさがさものに変わっていたので驚き、泣いた。もちろんすぐに捨てた。永遠ではないからこそ完璧に美しかったもののひとつ。

物の終わりを決める「捨てる」行為は、どんなに短い間でも自分の所有にしたということなのだろう。この句もきっとそうだ。


ふらここを残し屋敷は庭園に  内村恭子

一般的に、人が所有できる物質の中で一番大きく一番思い出があるのは家ではないか。この句のふらここは中庭にあり、屋敷というからにはL字だったりコの字のように中庭を囲むように屋敷があった。なにせ普通の家ではない屋敷であるから歴史もあっただろう。それが地面になったのだ。ふらここもそう新しいものでもなく、遊具を使うべきだった人間はとっくのとうに大人になっている。実際はふらここの周りに木や柵、道があるかもしれない。この句では世界にふらここ以外にはなにもなく、空白がつづくような気もする。空白を描くことは難しい。

今回の二句ともマジ諸行無常だわ。



第354号 2014年2月2日
内藤独楽 混 沌 10句 ≫読む
第355号2014年2月9日
原 知子 お三時 10句 ≫読む
加藤水名 斑模様 10句 ≫読む
第356号 2014年2月16日
瀬戸正洋
 軽薄考 10句 ≫読む

第357号 2014年2月23日
広渡敬雄 ペリット 10句 ≫読む
内村恭子 ケセラセラ 10句 ≫読む

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