2014-05-11

【週俳4月の俳句を読む】句の舞台 藤井雪兎

【週俳4月の俳句を読む】
句の舞台

藤井雪兎



土よりもすこしあかるく雉あゆむ 川嶋一美
一片のはなびら明日切る髪に 近 恵
鳥の巣にちやうどいいジグソーパズル 野口る理

句を書く時はそうでもないのだが、読む時に気になるのが、句の舞台、つまり、「この句はどこの世界の出来事なのか」ということである。

小説とは違って、俳句はノンフィクションと受け取られる傾向が強いと思う。もちろん俳句がノンフィクションであるという決まりは無い。あくまでも「傾向」である。

何故このような「傾向」が生まれるのか。それは、我々が生きているこの世界とはまた別の世界であるという設定で物語が展開される小説とは異なり、俳句はその設定が曖昧であるが故に、俳句の読者は、知らず知らずのうちに、自分の生きている世界を舞台として、目の前の俳句を受け取ってしまうからである。

それ故、自分の世界で起こったかもしれない出来事(「かもしれない」という所がポイント)だと多くの読者に認識させた句が支持される。逆に、作者の世界でしか起こっていないような句は支持されない。

俳句は読者を「引き込む」文学ではなく、読者の中に「入り込む」文学なのだから。

掲句三句とも、どれがフィクションでどれがノンフィクションかはわからないが、どれも私の世界で起こっているような気がした。

私が気付かずに素通りしてしまった素晴らしい出来事をお知らせしてくれたお三方に感謝するとともに、この世界を隅から隅まで認識することの難しさを実感した。

そして、俳句はその認識のためにあるのかもしれないと独りごちるのだった。


第363号 2014年4月6日
川嶋一美 あゆむ 10句 ≫読む  
近 恵 桜さよなら 10句 ≫読む
第364号 2014年4月13日
西村麒麟 栃木 10句 ≫読む
野口る理 四月10句 ≫読む

第365号 2014年4月20日
曾根 毅 陰陽 10句 ≫読む
第366号 2014年4月27日 ふらここ・まるごとプロデュース号

山本たくや 少年 10句 ≫読む
仮屋賢一 手紙 10句 ≫読む
木田智美 さくら、散策 10句 ≫読む
山下舞子 桜 10句 ≫読む





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