2014-07-20

【週俳6月の俳句を読む】この少しの傾き 山下彩乃

【週俳6月の俳句を読む】
この少しの傾き

山下彩乃



父の日を埋める白魚集まりぬ
「六月ノ雨」  髙坂明良

白魚は白いイメージだけれど、泳いでいる姿は透明らしい。涙であふれた視界のように、ぼんやりしている父の日をみた。


お手本をなぞると猫が濡れている
「お手本」  原田浩佑

お手本というと書道。正座をして息を吐いたとき、ふと窓から庭を見た。
この猫はきっと濃いグレーの猫だ。墨汁を含んだ筆みたいに。


届かない深さにこたへ青銀杏
「六月の日陰」  井上雪子

青銀杏から、高さではなく「深さ」にしているのがよくわからず、ひかれた。
空が、際限なく深いこととして。


パラソルの陰を半分もらいけり
「夏岬」  梅津志保

パラソルを貸してもらうとか、それが相合傘であるとか、そんなことではない。陰を半分だけもらっている。この単純な、すこしの傾きに行き着くことが難しい。

第371号 2014年6月1日
陽 美保子 祝日 10句 ≫読む
第372号 2014年6月8日
髙坂明良 六月ノ雨 10句 ≫読む
原田浩佑 お手本 10句 ≫読む
 第373号 2014年6月15日
井上雪子 六月の日陰 10句 ≫読む
第374号 2014年6月22日
梅津志保 夏岬 10句 ≫読む
第375号 2014年6月29日
西村 遼 春の山 10句 ≫読む

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