2014-08-17

自由律俳句を読む 56 天坂寝覚〔2〕馬場古戸暢



自由律俳句を読む 56  天坂寝覚2

馬場古戸暢


前回に引き続き、天坂寝覚句を鑑賞する。

傘借りてまだ居る  天坂寝覚

帰るタイミングを逸して、片手に傘を持ったまま玄関で話し続けているのだろう。ちょっとだけ困った句。

まっすぐ帰らない影が子どもに踏まれた  同

ここでのまっすぐ帰らない影の持ち主は、作者とともにいる女ではなかったか。夕暮れとなって影が伸びて行く赤い世界の中、子供たちの遊ぶ声とまっすぐに帰りたくない二人の姿が交差しているのである。

せまい日陰の汗がながれるまま  同

前句と同様、ここでも作者の側には愛しい人がいるように思う。こんな汗であれば、いくらかいても嫌ではあるまい。

はげしい雨の遠くからゆうやけこやけ  同

ストームが去った後の晴間には、なんともいえない爽快感がついてくる。ゆうやけこやけも同様であって、そうした景を見た日には、得した気分となるのである。

月が無い夜のやわらかいおんなのはら  同

この夜は、音も無い夜だったものと思う。互いの声しかきこえない部屋で、おんなのはらが月のように白く在ったのだ。

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