【週俳10月の俳句を読む】
切なさがむやみに
大井さち子
太陽と月を引つ張り烏瓜 大西 朋
烏瓜は夏の夜、レースに縁どられたような白い花を咲かせる。そして秋にはウリ坊のような艶やかな縞模様の実となり、冬が近づくころに赤く色付き、辺りの枯色の中で途方に暮れたようにポツンとぶら下がっている。
作者はこの烏瓜が太陽と月を引っ張っていると言う。烏瓜が引っ張るというのはどういうことなのだろう。太陽と月の運行は烏瓜が司っているというのだろうか。
やじろべえのように烏瓜を中心にして均衡を保っているのではない。例えば凧上げを想像してみたらどうか。強い風を味方にして凧はグングン空高く上がってゆく。凧の糸はピーンと張ってまるで空と自分がつながったかのように感じる瞬間。
そう、空に太陽と月を上げているのは烏瓜なのだ。
水澄むや澄めば澄むほど遠ざかる 二村典子
何から遠ざかるのだろう。いや、何から何が遠ざかるのだろう。
水澄む秋の美しい空気の中、「澄めば澄むほど遠ざかる」という措辞は胸をぎゅっと掴まれるような切なさがある。
具体的なものを何も見せない分、読む者の切なさがむやみに増す一句である。
第389号 2014年10月5日
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第390号 2014年10月12日
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第392号 2014年10月26日
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2014-11-09
【週俳10月の俳句を読む】切なさがむやみに 大井さち子
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