2014-11-02

落選展2014_24 草の矢 岬光世 _テキスト

24 草の矢 岬光世

宛名なき初荷のとどく灯なり
聞きとれぬそれが囁き水仙花
奪はれし音の容に滝凍つる
掘りかへす土の乾ける日永かな
春蘭の涙ひとすぢ読めるなら
遠雪崩眠りにつけぬ闇幾重
早梅や留まる舟に窓を拭き
擡げられ芥もくたや霜柱
猫車押してゆく坂百千鳥
接木せし手のぬくもりを持ち帰る
失投をぢつと見てゐる躑躅かな
初夏の雨にくぐりし竹箒
雑草のひようと伸びたる風薫る
夕されば帯締めなほす門柳
みづすまし一つ跳ぶたび向きを変へ
雷鳥の居間へそろりと歩み入る
草の穂のほのかに熟れてゐたるかな
葛の花幼なじみも年の頃
出航の合図をとほくをみなへし
波音の絶ゆるともなく曼珠沙華
雪渓がハートを成せる処にて
手をついて土のやはらか流灯会
大峰に眠る芒や昼の月
サンダルの斜めに減りし夜の秋
飛石にすがる影あり苔清水
藤の実の少なき園を通りけり
針仕事してをるらしや秋簾
星になる前の草矢を放ちけり
建て替ふることなく過ぎぬ秋桜
念力のやうに鶏頭残りたる
草いきれ一番星を傍らに
いちまいの日焼の背ナを海へ向け
お太鼓に川風とほす夏衣
塵取を緑にするや草を刈り
注ぎ口風雨に曲がり山清水
花野へと入る何人といふを捨て
鳴くこゑのひとつおほきく秋の蟬
扉なく向き合ふ壁や冬紅葉
真影を離さぬままに霧氷なる
家具ひとつ運び出したり雪催
初冬の息に磨かれハーモニカ
むつかしき門をくぐらず枯芙蓉
をちこちに実の熟れいそぐ秋暑かな
人伝てに先代の所作夏の帯
幕間に箸を交ふる木の芽和
人寄する庇の奥の目高かな
小春日といふ一曲を録せずに
ゆつくりと櫓に戻す手や冬旱
継ぐあてのなき宿にして零余子飯
片側の頰の明るき冬の晴

2 コメント:

上田信治 さんのコメント...

藤の実の少なき園を通りけり
扉なく向き合ふ壁や冬紅葉
家具ひとつ運び出したり雪催

おだやかな詠みぶりが、常識の範囲に収まってしまいがちな中、いくつか、はっとさせられる句がありました。

四羽 さんのコメント...

掘りかへす土の乾ける日永かな
人が掘り返した土、虫が動物が掘り返した土、乾いた大小の土団子がふと目にとまる。

念力のやうに鶏頭残りたる
密生していた鶏頭もほとんどは枯れてしまったが、意地のように残っている数本が赤く生命力を主張している。

片側の頰の明るき冬の晴
冬の低い陽光を受けて、片側の頬のみ照らされる。しかしもう一方は影として残り、晴れの日にも含みが残る。

全体に落ち着いた雰囲気で、自然と生活の調和を感じさせる。