2014-11-23

自由律俳句を読む 69 小室鏡太郎 馬場古戸暢



自由律俳句を読む 69   小室鏡太郎

馬場古戸暢


小室鏡太郎(1885-1953)は、静岡出身の自由律俳人。渡米し、スタクトンにて「ドングリ会」を結成、後に「デルタ吟社」と改め、尾沢寧次とともに発展せしめた。一碧楼に師事。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。

遊んでゐるやうに雪ふり心まどふことあり  小室鏡太郎

自身の気持ちと雪のふり方が重なる瞬間。スタクトンでも、雪は降ったのだろうか。

雀なれてふくらんで道べ草もえ  同

雀が自身になれて、なかなか逃げなくなったということか。嬉しい句。

人間の枯れ行くを吾にみる妻に見る桜もち  同

家族そろって、人生に疲れてきたのだろう。桜もちに、希望が見える。

枯蒲に火をかけんとする風向き  同

野焼きは、風向き次第で大変な事態を引き起こす。気が付いてよかった。

霧晴れ切らんとす船底を出でし  同

アメリカに到着したその瞬間を詠んだものか。鏡太郎の新天地での生活に、晴間が訪れんことを。

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