自由律俳句を読む 69 小室鏡太郎
馬場古戸暢
小室鏡太郎(1885-1953)は、静岡出身の自由律俳人。渡米し、スタクトンにて「ドングリ会」を結成、後に「デルタ吟社」と改め、尾沢寧次とともに発展せしめた。一碧楼に師事。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
遊んでゐるやうに雪ふり心まどふことあり 小室鏡太郎
自身の気持ちと雪のふり方が重なる瞬間。スタクトンでも、雪は降ったのだろうか。
雀なれてふくらんで道べ草もえ 同
雀が自身になれて、なかなか逃げなくなったということか。嬉しい句。
人間の枯れ行くを吾にみる妻に見る桜もち 同
家族そろって、人生に疲れてきたのだろう。桜もちに、希望が見える。
枯蒲に火をかけんとする風向き 同
野焼きは、風向き次第で大変な事態を引き起こす。気が付いてよかった。
霧晴れ切らんとす船底を出でし 同
アメリカに到着したその瞬間を詠んだものか。鏡太郎の新天地での生活に、晴間が訪れんことを。
0 comments:
コメントを投稿