〔今週号の表紙〕
第410号 吊し雛
有川澄宏
最近、吊し雛がブームのようですね。私も数年まえから、近くの郷土博物館や神社の社務所などに吊し雛を見に行くのが、いつの間にか習慣になりました。そんな場所には、広めの庭があって、梅や満作、せつぶん草など春の草木も見られ、もう北に帰る準備に忙しい鳥たちにも会えるので、季節の楽しみが一つ増えたような気がしています。
吊し雛が始まったのは、江戸時代だそうで、豪華な段飾り雛に手の出ない庶民の家で、お母さんやおばあちゃん、おばさんや近所の方達が小さな人形を持ち寄って吊したのが、最初だったそうです。
雛の種類も、良いですね。犬、猪、鶏、馬、人参、苺、蛤、鬼灯、花‥‥。みんな身近な題材で、それを布の端切れで作って持ち寄り、女の子の成長を祈って吊した、と聞くと、「限界集落」などという言葉が飛び交う昨今の世相が悲しくなります。
福岡、静岡、山形が、「全国三大吊し飾り」と呼ばれているようです。
ついでに、おばさん達の説明を聴くと、「吊すタイプ」「床置きタイプ」「台付きタイプ」など、さまざまな種類があるのですね。
わが家は? と思い出してみました。娘が年子で生まれ、生活もままならぬ貧乏な時代だったのに、かなり立派な段飾り雛がありました。あれは祖母が買ってくれたのだったか‥‥。ただ娘達が独立した頃からは、天袋から出すのはともかく、仕舞うのがなかなか厄介で、面倒になりました。また、その頃から、公園や道端の可哀想な子猫を拾ってくることが多くなり、子猫の格好の遊び場になるので、手足が折れたりして、もう出さない方が良いか、となったままです。たまには天袋を開けてあげなくちゃ! 申し訳ない。
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