2015-03-29

【八田木枯の一句】引鶴のばさつく音の夜陰かな 西村麒麟

【八田木枯の一句】
引鶴のばさつく音の夜陰かな

西村麒麟


引鶴のばさつく音の夜陰かな  八田木枯

『鏡騒』(2010年)より。

鶴や鏡は誰もが知っている木枯好みで、美しいものや失われていくものを特に好んだ。

「引鶴」は全句集中8句、「鶴渡る」は5句、「鶴」は28句、気持ちの良いぐらいの鶴好きである。

この句は、鴨では寂しさが足りず、雁では美しさが足りない。光を帯びたような鶴が夜を裂くように帰って行くから美しいのだ。ばさつく音は耳ではなく、心を騒がしているのだろう。

さて、この句の少し別の面白さは、全句集中の28句にある、いづれかの鶴が帰って行くのではないかと想像することだ。

鶴の手をひいてよこぎる奥座敷  『夜さり』

家裏で鶴手なづけし少年よ  『夜さり』

逢坂や微熱の鶴は夜遊びに  『鏡騒』

作者にとってはどの鶴もたまらなく愛しいはずだ。

三月は木枯さんの亡くなった月であり今も憂鬱になる。西行は花、木枯は鶴帰る、哀しいけれど見事だ。



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