自由律俳句を読む 90
浅野麗木
馬場古戸暢
浅野麗木(あさのれいぼく、1888-1962)は、東京出身の自由律俳人。新劇俳優を志し、後に劇場の支配人となった。専門学校時代に上級にいた飯田蛇笏の影響もあって定型俳句をはじめたが、一碧楼に師事して『海紅』に参加。その後、『青い地球』によった。以下では数句を選んで鑑賞したい。
少し風邪気味の女体に触れんとす 浅野麗木
少し風邪気味なのは、麗木か女か、両方か。いずれの場合で読んでも、非常に美しい景が広がる。いざいかん。
誰かいたづらのぎんねこやなぎぞ白きうなぎぞ 同
不勉強なためか、よくわからない。ぎんねこは、私娼のことか。いたづらとは、やなぎとは、白きうなぎとは。ただ、雰囲気が綺麗だと思ったので取り上げた。
菜の花さき貧しきこども目刺のごとく並びいる 同
「目刺のごとく」の直喩が、子だくさんの時代をよく表している。このこどもたちが現代の私たちにつながっていることが、嬉しくてならない。
逃げる蛇ころしたをとこ夜の愛撫やさしく 同
この「をとこ」は自身のことか、誰かのことか。少なくとも、殺生と愛撫は同時に存在することができるのである。
まひるさみしおたまじやくしのほか見るものなし 同
「おたまじやくし」を自然の中で見た記憶がない私には、こうしたまひるをむしろ羨ましく思う。しかし水とか田とか山とか川とか、見るものはなかったのか。
2015-04-26
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