2015-11-01

2015角川俳句賞落選展 10 葛城蓮士「終末論」テキスト

10. 葛城蓮士 「終末論」

浮浪者の木下闇でうたう唄
鬼の子ののろまを笑う蛇の舌
産声の悲喜定まらぬ虎が雨
ほとんどが嘘の噂や花茨
夕凪や墓標は水の枯れている
サングラス煙草手向ける花の白
向日葵のおわりは陽から目を逸らす
風は死ぬピアノ叩かぬ指も触れ
弟と氷菓貫く棒を噛む
蝌蚪集くみずに万の溶けた色
描かれて熱砂に波は届かない
泡纏うテトラポットや夏の果
夕焼けてセーラー服の背で組む手
流星を追って地平に足の跡
蜩よよもや夕陽に触れるまい
いきものの皆毒を持つ二百十日
野晒に囮小さく羽搏けり
息すれば身に入む人の肌の熱
スナックの名前光らぬ無月かな
台風の目にいて影のうえにいて
空淡き夜長宴のための皿
サイレンの途切れて静か穴惑い
終わらない残暑プログラムコード書く
冬支度結び目だった布の色
廃工場崩して月の若返る
怪物の林檎齧ったあとに蜜
雪女郎スワンソングを終えて白
ビッククランチのはじまりといふ夜咄
空の果失せて恐ろし神無月
路地裏の八百屋の留守や冬ひでり
寒卵皿のすみへと逃げており
大晦日アバター歓ぶディスプレイ
狂花咲くあの人の誕生日
雪折の雪に溺れてゆくごとし
水洟をすする眼の鋭さよ
懐手して旧友に会わぬよう
足元の崩れる夢や冬おわる
春を待つ枕に頭蓋うずめ待つ
光芒や陣形揃いだす帰雁
陽炎や歩いてもなお遠からず
錆生えた有刺鉄線雪の果
石鹸玉呼吸の音をくもらせて
小説のあとがき読まず春愁
末黒野や爺の産声ごとき声
寄居虫の寝床誰かの死んだ床
豚の餌ごとき錠剤カルナヴァル
蘖やあと千年は名無し草
狂乱の予言も外れ青き踏む
霾天や終末論者立ちつくす
万愚節空に裂け目のような雲



■葛城蓮士 かつらぎ・れんじ
立教大学社会学部3年、所属なし。WHAT Vol.3 B「みなみのうお座」。Twitterにてゲリラ句会(@gerira_kukai)を運営。
 

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