2015-11-01

2015角川俳句賞落選展 9 奥村 明「ZARAにあるLOVE,ないLOVE. 」テキスト

9. 奥村 明 「ZARAにあるLOVE,ないLOVE. 」

水のなき初夏のプールの中歩く
五月病よく陽の当たる壁の花
ラジオ美人局白夜の周波数
梅雨に入り貨物列車は抜け出せず
まだ大丈夫だってまだ半夏雨
七月のレンズ光線跳ね回る
夏暁へアクセルを踏む湾岸道
流行の水着に似合ふ彼氏欲し
無駄毛処理ぴりりと痛き夏休み
CMの熱砂「アネッサ」資生堂
明易し歯ブラシ買ひにコンビニへ
朝涼のパンを焦がせし蝉の声
夏の夜のクラブの隅の二人かな
灼けし国道ビーサンのまま帰る
炎昼のブランコ軋む住宅街
首周り伸びしHanes熱帯夜
客退けてラーメン鉢並ぶ 晩夏
無人駅下りて私の夏の果
制服にアイロンを掛け夏惜しむ
残暑にてデート中止♡の報せあり
ランボルギーニ流星を追ひ掛けて
一頁ごとに秋めく写真集
献血は恋占のため九月かな
朝霧の情事の畔マンハッタン
葡萄桃梨クリストの梱包で
昼飲みの通天閣の秋高し
カンナからカンナへ父の手をひく
月光を冷凍保存Ziploc
秋の声ならさびしさを歌ふだけ
秋澄むを知悉しダイヤ鑑定士
秋霖や別れ話で駐車中
肌寒の腕やZARAのワンピース
パリコレの機械仕掛の案山子かな
秋風や骨よく動く競走馬
鳥になるテロ総身に赤い羽根
分校のアメフトごっこ紅葉っ娘
全国のテニスコートに黄落を
深秋の令嬢となる読書かな
のぼる鮭死して川沿ひ通学路
行く秋やぷかりぽっかり煙草雲
冬近し道路横切る鹿の王
 ※参照:2015年本屋大賞第1位作品『鹿の王』の表題を引用。
冬が来る北極のアザラシのせゐ
あの人がいない小春日の通勤電車
また嘘をつくリアシートにはポインセチア
神様と二人炬燵のクリスマス
目を閉ぢて深き冬眠ご一緒に
日常を鯨のやうに持て余す
さよならはLEDの青に降る雪
それぞれに回りつづけるスケート場
バレンタイン雪の魔法のとける頃



奥村明 おくむら・あきら
兵庫県。俳句、短歌、キャッチフレーズなどONE LINE POEMを創作。銀化所属。

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