2015-11-01

2015角川俳句賞落選展 24 岬 光世「波の記憶」テキスト

24. 岬 光世 「波の記憶」

草の穂へ戻る膝下濡れてゐて
涼しさを二人乗りしてゐたるかな
サーフィンの勝気な目尻えいと立ち
暮れかかる窓に置く肘夏の雨
浜木綿や波の消しゆく波頭
生身魂花火の柄の暖簾より
抜け道をふつと素顔の祭髪
交替の片蔭ゆづる守衛かな
捕虫網水の浅さをもてあまし
鷺草の飛べる夜空をつくる人
雲の峰多忙な日日を掃き出して
退屈に展望台を歩む蠅
金魚玉内に外にと森育て
百日紅浮かび置きある手桶かな
蚊遣火にかからぬやうに水を遣り
サルビアの門を構へて人に会はず
豊の秋鳶は腹をひけらかし
はなれゆく蜻蛉を弾く一葉なる
戸惑ふも名を答へたり曼珠沙華
うすらかに煮ふくめられてゆく夜長
航海図寒き壁よりはみ出して
外套の中の寂しき手足かな
雪催黒鳥としてためらはず
登れない坂の上にはクリスマス
ひたむきに降り白鳥にあらぬ雪
冬光の膨らむほとり膝近く
歳晩の町にいつもの物を買ふ
アイスホッケー構へて眉を鉤形に 
薄雲に人の恋しき五日かな
閑かなる葉に山茶花の押し合へる
火の産みし巌の肌や下萌ゆる
反りかへるまで咲ききつて梅の花
竹叢のさうさうと鳴る涅槃の日
ひつそりと身を肉厚に室の花
不揃ひに凹みて剥けて鬼や豆
ふらここの板傾かせ立ち上がる
整然と光の中へ球根植う
手袋の片方いつも気まぐれや
白塗りの雛の好物そつと聞く
蠟梅のまばらに過去を明るうし
銀宝の紳士と呼ばれくぐる店
水仙花映らぬ水の黙深く 
乳鉢を施餓鬼の指でぬぐひけり
夜を生るる水の広ごり花筏
川魚つやつや炊かれ花菖蒲
新海苔の粉を飛ばして封を切り 
青梅の瓜実顔をうかがへり
材木を架けし迂回路九輪草
一滴に漲る力秋茄子
かろやかに木立を蹴つて月高し



■岬 光世 みさき・みつよ
「クンツアイト」「翡翠」所属 

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