2015-11-01

2015角川俳句賞落選展 27 利普苑るな「否」テキスト

27. 利普苑るな 「否」

漕ぎ出せば川岸長き薄暑かな
夏つばめ高く天駆け人の葬
母の日やベンチに並ぶ松ぼくり
山雀のモールス信号ツツツツツ
白玉や野良猫三代盛衰記
太宰忌の枝に揺れゐる蛇の衣
待人の来ぬらしと酌む梅酒かな
梅雨雲に突つ込む機体退院日
熱帯夜病棟に棲む黄泉神
留守宅に猫の気配や吊忍
西国より届く白桃父米寿
盆波の犇いてゐる板の下
破戒僧のごと林中の曼珠沙華
ドラマーの刻むカウント桐一葉
木犀やわれ亡きあとの太陽系
弱法師を照らして行けり流れ星
用水路跨ぎ花野に入りにけり
孫の名を遺言とせむ葛の花
秋夕焼ドンキホーテの背景に
転校は履歴書に無し蓼の花
花野道死は弾丸となりて来る
白線の向かう黄泉らし蚯蚓鳴く
てのひらに硬き切符や冬ぬくし
月光を掬ひ舞ひたる枯葉かな
和紙にある草のぬくみや時雨来ぬ
手首折り猫の寝返る夜寒かな
鳰鳴くや鎌田實をポケットに
車積む車走りて年の暮
境内に入る一礼や初鴉
日脚伸ぶ砂時計付くティーセット
眠さうなキリンの遊具雪もよひ
探梅や寄り来る猫の縞模様
流氷より戻りし人に灯せり
料峭やてつぺん見えぬ螺旋階
あるときは鴉を濡らし春の水
紅梅や日溜りなれば歩を緩め
下萌に小さき虹のありにけり
雛の間やちりばめらるる赤きもの
抱き戻りけり朧より出し猫
春落葉日当るものはくれなゐに
死神に否と応へし春の夢
木瓜咲くや古書肆の主の厚眼鏡
湯に放つはうれん草や今日も雨
はこべらや天衣無縫のひとでなし
苗植ゑし畦に来るか鳥の声
囀や応募葉書に貼るシール
光満ちたり花虻のホバリング
春昼や糸の尾長くグルーガン
ふつふつと草の呟く穀雨かな
少年のまなじり赤し磯巾着






■利普苑るな りーふぇん・るな

1959年広島県生まれ、大阪府在住。1989年「河」入会、2005年退会。2007年「鷹」入会、2012年同人。句集「舵」2014年(邑書林)

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