2015-11-01

2015角川俳句賞落選展 26 薮内小鈴 「声真似」テキスト

26.  薮内小鈴 「声真似」

鉱石に地上映りて梅雨明けぬ
酒の淵魚篭たづさへし父沈む
海景を集めてひそり美術館
炎昼や蛸も狐もビルかげに
百日紅うでのからんでゐたる腕
朝涼しハイジたち履く靴濡れて
ふと止まりふと動きだす団扇の手
夕立後ひらくもの在りリダンダン
たばこ屋に電球一つ夏の果て
青き森跳人のうなり白化圏    
ツクツクボフシ声真似可笑し樹の男
月が満ちてコルトレーンを畑へ蒔く
落花生生意気にも入る鶏おこわ
蚯蚓鳴く怖しなつかし旅に出ん
音もせず自転車越せり曼珠沙華
天気図へ蝗飛び込みあはつかな
鮭食みし唇鮭が戻り来る
きれぎれに秋祭り見ゆ環状線     
独りごと梔子の実の煌々と
そぞろ寒ミドリムシは匙いつぱい
着信音裏の爺さん菊を燃す
スニェークと雪はロシアに現るる
小春日に囲碁打つ天を探査かな
猫の尾の塀をなぞるや散紅葉
ゆふしぐれカランだまらん釜らんだ 
河を越え伸びをり塔の影師走
朴落葉米とぐすきに富士の燃ゆ
羽根合はせ保つ体温暦売り
凍て蝶に記せどしるしきれざらむ
二両車の初日はさみて曲りをり
傘よりも明るき脚で鴨およぐ
ストーブの炎揺らすや薬缶唄
冬鷗うすみどりばむ夢なりし
ふたつみつ咲き初む梅やアラビア語
缶開けばボタン斜螺奢羅春浅し
はり指圧行き止まりなる木の芽時
蕗の薹母足うらをそとがはへ
呆として波の涙ぞホタルイカ
春疾風東京湾へ汐はしる
床に砂まぢりに広ぐ桜貝
しましまの街もあるらん花曇
囀を糞にかへたり門の前
ゆさはりや太陽と逢ふ樹のまにま
野薊にまなこ覚めゆく小径哉
火静けしジプシー映画穀雨降る
ヘンシンす怪獣のいろ昭和の日
雲海に鴉啼き交ふ声ばかり
終点は薔薇園に列の向かひたる  
古書売つて古着もとめり五月闇
合歓の花静止画像で揺られをり





■藪内小鈴
 やぶうち・こすず
1968年生まれ。2014年夏より作句。無所属。
10年余り詩を書いています。

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