2016-08-14

【句集を読む】一日の次の一日 池田澄子『思ってます』の2句 西原天気

【句集を読む】
一日の次の一日
池田澄子思ってます』の2句

西原天気



池田澄子句集『思ってます』(2016年7月/ふらんす堂)に、いわゆる池田澄子調が数多く並ぶなか(安定の品質)、一読後のいちばんのお気に入りはこの句。

日は雲の奥を落ちつつ大晦日  池田澄子

池田澄子についてまわる「口語」調でもなく、表立って洒脱(池田澄子句における賞賛の要素)でもなく、キャッチーにキュート(同前)でもないこの句が自分にとっての「いちばん」であることは不思議だが、句を好く、のに合理性はないから、この不思議を、自分で面白がっている。美味しさを二度味わうように。

そして、次の句、

元旦でありぬ起きるかまだいいか  同

まさしく池田澄子調。これを前掲句と並べて、三度目の美味しさ。


ある一日があって、明ければ、次の日。運良く目覚めれば、次の日。このシンプルな事実を私たちは生きている。俳句は、この「シンプルさ」をうまい具合に私たちの心に響かせ、伝えてくれるシロモノ。それを再確認させてくれる句集でしたよ、『思ってます』は。


※一般論で結末してしまいましたが、「一般」を受け止められるのが池田澄子句威力であり美点(へんな理屈だなあ、おい)。その意味では、俳句プロパー向けの異常価格2,700円ではなく、一般書籍として書店の棚に並んでほしかった本。

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