【俳誌を読む】
金子兜太追悼特集・4誌比較 年譜の観点から
橋本直
『俳句四季』などを除いて総合誌の兜太追悼特集に一応目を通す。研究者目線で言うと、追悼号はその作家の同時代の評価、著作一覧やその抄出、年譜などが載っているので、著作物や全集以外では作家論に取りかかる時に第一に当たる資料になってくる重要なものだ。だから古書店で総合誌で俳人の追悼号を見つけるとなるべく買うようにしている。
兜太の場合、只今現在である分、同時代の評価をさらに踏み込んで個々の記事の筆者と兜太との関係性からの問も立ちあがるので、いましばらく寝かせておきたくなる。その観点で言えば、比較的いま重要になってくるのは、いつどこで何をしていたのかが記されている年譜。いずれは『金子兜太全集』なり新しい選集なりに詳細なものが出るとしても、ひとまずなるべく詳細な年譜があることは研究者にとってはかなりありがたいことだ。
そういう点で言わせてもらえば、今回別冊まで刷って物量で圧倒している『俳句』の年譜はわずか2ページしかなく、『俳句界』も同様に少ない。
一方、『俳句α』は年譜とは言わずに「金子兜太アルバム」と題し、1から4に分け、豊富な画像を入れつつ、合間合間に記事(執筆者は「「寒雷」時代の金子兜太」石寒太、「金子兜太に惹かれて」マブソン青眼、「これからの金子兜太」田中亜美)を挟む、20ページにもわたる内容となっている。これは新潮社の「文学アルバム」的な作り方と言っても良いだろう。年譜の執筆者の署名はないが、石寒太によるものか。
『俳壇』は、田中亜美編によるほとんど画像を使わない、11ページにわたる三段組の年譜が載っている。ともにかなりの情報量がある。
過去に出たものを除き、当面この2冊の年譜をまずはアテにすることになるのだろう。
2018-05-27
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