2018-06-03

後記+プロフィール580

後記 ◆ 村田 篠

友人の小学生のお嬢さんが通学に使っている、ある私鉄の駅のお話です。その駅のホームには非常停止ボタンが設置されていて、その傍らに「あ!と感じたら押して下さい」と書いてあるのだそうです。それを見たお嬢さんは思わず笑って「あ!忘れ物しちゃった!と思ったら押してもいいのか?」と思ったのだとか。

もちろん、「そういうときは押さない」ことを暗黙の了解で分かっているから、思わず笑ってしまうし、そういう突っ込みもできるわけです。そして、「非常停止すべき局面」以外でほんとうにボタンを押してしまう人は「変な人」「いたずらな人」「迷惑な人」ということになってしまいます、日本では。

でも、この書き方だと、例えば、さまざまな文化が入り乱れる多民族国家では、押す人がいてもおかしくない。「非常停止すべき局面」とはどういう場合なのか。それを言葉で定義することは、案外とむずかしいものです。日本に住んでいるとあまり気にすることはありませんが、たまには、「ほんとに言わなくても分かるのか」と考えてみるのも必要かもしれないと思います。地球上には「押す人がいてもおかしくない」国もたくさんあるのです。

そういえば、子どもの頃、好奇心から、電車の非常停止ボタンを押して電車を止めてしまった幼なじみがいました。ダイヤは多少乱れましたが、親は平謝りに謝って、なんとか事なきを得ました。現在の東京でそんなことをしたら、損害賠償とか何とか、大変なことになりそうです。のどかな田舎での話です。



それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。



no.580/2018-6-3 profile

■浅川芳直 あさかわ・よしなお
1992年生れ。「駒草」。蓬田紀枝子、西山睦に師事。「むじな」編集・発行人。カレーショップ酒井屋の冷し野菜そばがマイブーム。宮城県名取市在住。

■佐々木紺 ささき・こん
2014年、石原ユキオのBL句会に参加したことから俳句を始める。2015年~BL俳句誌「庫内灯」vol.1-3編集部。

久留島元 くるしま・はじめ
1985年1月11日生。「船団」会員。第七回鬼貫青春俳句大賞受賞。2012年~、柿衛文庫「俳句ラボ」講師。blog「曾呂利亭雑記」

■彌榮浩樹 みえ・こうき
1965年鹿児島生まれ。1998年「銀化」創立とともに参加、中原道夫に師事。第二回銀化新人賞受賞。銀化同人。句集『鶏』(2010 ふらんす堂)。2011年「1%の俳句」で群像新人文学賞評論部門を受賞。

■瀬戸正洋 せと・せいよう
1954年生まれ。れもん二十歳代俳句研究会に途中参加。春燈「第三次桃青会」結成に参加。月刊俳句同人誌「里」創刊に参加。2014年『俳句と雑文 B』、2016年に『へらへらと生まれ胃薬風邪薬』を上梓。

■しなだしん しなだ・しん
1962年新潟県柏崎市生まれ、東京都在住。句集に『夜明』『隼の胸』、合同句集に『塔の会九集』『新現代俳句最前線』。「青山」編集長。俳人協会幹事。「塔の会」会員。

■伊藤蕃果 いとう・ばんか
1974年和歌山県生れ。無所属。

中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。 

■岡田由季 おかだ・ゆき
1966年生まれ。東京出身、大阪在住。「炎環」「豆の木」所属。2007年第一回週刊俳句賞受賞。句集『犬の眉』(2014年・現代俳句協会)。ブログ「続ブレンハイムスポットあるいは道草俳句日記」

■西原天気 さいばら・てんき 
 1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。ブログ「俳句的日常」 twitter

■村田 篠 むらた・しの
1958年、兵庫県生まれ。2002年、俳句を始める。現在「月天」「塵風」同人、「百句会」会員。共著『子規に学ぶ俳句365日』(2011)。「Belle Epoque」

0 comments: