〔今週号の表紙〕
第589号 バイカモの花
大江 進
鳥海山の西面中腹から南南西方向に流れ日本海に達する牛渡川(うしわたりがわ)は、最も川幅の広いところでも10mに満たない小河川である。しかしこの川の最大の特徴は流水の100%が湧水であることだ。水温は年間を通じて11℃前半、水量は毎分24トン(日量約35000トン)、無色透明の清冽な渓流である。
そして例年、5月末頃から8月末くらいまで、写真のように川面一面にバイカモの花が咲き乱れる。バイカモは漢字で書くと梅花藻で、梅の花に似た白い5弁花。澄んだ冷たい流水でないと生育できない水草で、これが繁茂していればその川はとくべつにきれいな川である証といえる。バイカモはキンポウゲ科の多年草であるが、キンポウゲの仲間としては珍しく毒がなく、地域によってはさっと湯がいて三杯酢で食べるところもある。
数十年も前の昔のことだが、バイカモはこの牛渡川以外にももっと広く分布しており、地元では「金魚藻」といって川から採ってきて池や水槽に放つこともあった。けれども、今考えてみれば栄養分の多いうす濁りの河川や湖沼を好む金魚やフナやコイと、清流を好むバイカモとの共存は難しかったであろう。
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