2018-09-08

後記+プロフィール594


後記 ◆ 上田信治

自分は、山田耕司さんから、主に久保田万太郎を連想します(あとは、句によって、摂津幸彦とか、渡辺白泉とか、加藤郁乎とか、エロいときの三橋敏雄も)。

子規・虚子にはじまる系統樹とも戦後の前衛の系譜とも、どこか遺伝子を異にする「鬼っ子」のような「ミッシングリンク」のような。

歌謡(うた)っぽさ、とでも言ってみましょうか。
いい調子で、うそぶくような。裃つけない、着流しの町っぽいかんじ。

山田さんの句の肉体性は、読者の肌近くに親密さを醸成します。なんというか、小唄のような。摂津や白泉が「俗」をやるときのゾクッとくる親密さに、それは近い。

読者の耳元で唄う。

そのことと、山田さんの句がエロいということは、どちらがモチーフでどちらが方法というふうには、おそらく分けられません。

俳句という肉まんの、何が中味で何が皮かは、特定できない。

そういったことを思いました(肉まんのたとえは失敗している、とも思いました)。

跳び箱よ虹は橋ではなかつたよ
みつ豆の叱る側だけ泣きながら
水無月や手なりに寄せて骨は山


シンプルに情が深い句も、いいんですよねえ。



今号の『不純』特集は、佐藤文香さんの発案・プロデュースによるものです。佐藤さんと、執筆者各位(力作ぞろい!)に、そして、もちろん山田耕司さんに、深く感謝いたします。

それではまた、次の日曜にお会いしましょう。


no.594/2018-9-9 profile

山田耕司 やまだ・こうじ
1967年生まれ。群馬県桐生市在住。句集『大風呂敷』、『不純』。俳句同人誌「円錐」編集人。

伊東光穂 いとう・てるほ
1990年東京生まれ。国際基督教大学教養学部アーツサイエンス学科卒業。
寺山修司経由で俳句に興味をち、知り合いから誘われて佐藤文香の句会に参加し、俳句を作りはじめる。現在、小部屋句会(佐藤文香主催)、走鳥堂句会(同主催)に参加。国語教育への俳句の活用について学んでいく予定。
Twitter:@taruhoiro

高須賀真之 たかすか・まさゆき
1989年愛媛県生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻修了。劇評にて、ふじのくに⇄せかい演劇祭2017劇評コンクール最優秀賞および入選、第22回シアターアーツ賞佳作など受賞。
『超新撰21』(邑書林)を読んだのをきっかけに、2017年より句作を始める。現在、小部屋句会、走鳥堂句会に参加。『世界』(岩波書店)の「岩波俳句」に投句中。
Twitter:@cayest1114

山田航 やまだ・わたる
歌人。札幌在住。1983年生まれ。第2歌集「水に沈む羊」で第1回高志の国詩歌賞受賞。

樋口由紀子 ひぐち・ゆきこ
1953年大阪府高槻市生まれ。兵庫県姫路市在住。「晴」編集発行人。「豈」同人。

生駒大祐 いこま・だいすけ
1987年三重生まれ。「天為」などを経て現在無所属。第3回攝津幸彦記念賞、第5回芝不器男俳句新人賞。

佐藤文香 さとう・あやか
1985年兵庫県生まれ。句集『海藻標本』、『君に目があり見開かれ』。編著『俳句を遊べ!』、『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』など。
http://satoayaka.com/

■堀下翔 ほりした・かける
一九九五年、北海道生まれ。二〇一四年、第六回石田波郷新人賞。二〇一八年、第五回芝不器男俳句新人賞にて対馬康子奨励賞 。 「里」「群青」同人。つくば市在住。佐藤文香編『天の川銀河発電所』入集。筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸言語専攻日本文学領域一年次。

■荻原裕幸 おぎはら・ひろゆき
1962年名古屋市生れ。名古屋市在住。歌人。1987年短歌研究新人賞受賞。2006年名古屋市芸術賞奨励賞受賞。歌集『デジタル・ビスケット』(2001年沖積舎)他。

■瀬戸正洋 せと・せいよう

1954年生まれ。れもん二十歳代俳句研究会に途中参加。春燈「第三次桃青会」結成に参加。月刊俳句同人誌「里」創刊に参加。2014年『俳句と雑文 B』、2016年に『へらへらと生まれ胃薬風邪薬』を上梓。

中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。

西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。ブログ「俳句的日常」 twitter

■上田信治 うえだ・しんじ
1961年生れ。句集『リボン』(2017)共編著『超新撰21』(2010)『虚子に学ぶ俳句365日』(2011)共編『俳コレ』(2012)ほか。

0 comments: