2007-05-13

暮らしの歳時記 五月晴 山本勝之

暮らしの歳時記 五月晴 ……山本勝之


雨は明け方あがって、これぞ五月という青天である。

とりあえず布団を干し、お茶を一杯。

ソバ茶とうどんつゆが切れているので、散歩がてら上野アメ横へ。すっかり葉桜で、「いったい、あんたら、どないしたん!」というような変わりようである。「二木の菓子」店でソバ茶、うどんつゆ購入、ユニクロで生なりのTシャツ二枚。

回転寿司で昼食。ビールではなく、お茶でいただく。

帰ってきて仕事をしているふりをしていると、S山さんから電話。「あのさー、携帯電話が壊れちゃって、上野のヨドバシカメラに行こうかと思うんだけどー」

それがどうした、いい大人なんだから、チャッチャと行けばいいじゃんと思うが、窓の外を見れば、絶好のビール日和なのである。

「フンフン、で、どこで待ち合わせる、すぐに出られるよ」
国立博物館前ということで、じゃ」

本日二回目の上野詣で、ヨドバシでチャッチャと機種を選び、データ書き換えの間、駅前のレストラン「聚楽」へ。

こっちへ越してきて5年を過ぎ、何度も店の前を通ったことはありますけれど、決して入らなかったというか、入ろうとも思わなかった禁断の店。S山さんも、子供の頃、親に連れられて入ったかなー、と記憶曖昧。

いやあ、創業80年はだてじゃない。レトロでキッチュ、半端な和・洋・中ならなんでもこいです。隣りのテーブルのカップルが、粉チーズを山のように振りかけて食べるナポリタンに、涙ちょちょ切れます。「懐かしのプレート」てなメニューがありまして、一枚の皿にオムライス、ナポリタン、エビフライ1本、カキフライ2ケ、キャベツみじん切りが乗っかってるわけです。900円。

その、メニュー写真を見た途端、S山さん「うわーっ、今すぐに祐天爺(編註) を呼び出して、これを喰わせたい!」と叫んだものです。窓からは電車が見えるし。「奴には、上野精養軒のビアガーデンはもったいない、ここがいい、よし、来月の句会はアメ横吟行、聚楽の座敷で句会だ」と、ソーセージ盛り合わせといかげそ天ぷら、生ビール2杯。帰りに「1人2000円宴会プラン」というチラシをもらって帰ったのでした。

筆者註:以上はフィクションであり、事実と似ているようなことがあるとすれば、ほんの偶然です)


(編註)
東京・祐天寺在住の俳人。

2 comments:

匿名 さんのコメント...

あのー。「五月晴」は、五月雨のころの晴れ間のことで、時期的には六月になってからの季語だったと思うんですけど。(角川書店『俳句大歳時記(夏)』にて確認済み)

匿名 さんのコメント...

青島さん、ありがとうございます。

タイトルは山本さんは関与せず、私が付けました。申し訳ないです。

以降の読者諸氏には、青島さんのコメントを【註】として読んでいただくことにします。