2007-11-11

Yくんの師匠 モル

Yくんの師匠 ……モル



翼さんはYくんの師匠です。Yくんは友達の先輩で俳人です。私が初めて翼さんに会ったのはYくんの誘いで初めて句会に参加したときでした。句の良し悪しなんて正直全然分からなくて、でもそんな中で一句、とても気になる句がありました。

  小春日や釣糸散乱する港

翼さんの句でした。何て素敵な俳句を作る人だろうと思いました。こんな句を作れるようになりたいと思いました。それからYくんが誘ってくれる句会には欠かさず出るようになりました。

翼さんとはそれからも度々句会で同席することがありました。でも上のような句を作ったのはそれきりで、いつも翼さんの句には”性”と”死”が満ち満ちていました。花鳥諷詠でもない機械諷詠でもない翼さんの句。しばらくして翼さんがYくんの師匠であることを知りました。妙に納得してしまいました。Yくんの俳句信条、「俳句は○○である」などと決め付けないこと。なるほどなるほどです。

私は翼さんの弟子ではないけれど、翼さんには随分いろんなことを教えてもらったような気がします。一番はじめに言われたことは「人の言うことを聞くな」でした。自分の俳句が作れなくっちゃ駄目なのだと言われました。それから三鬼と楸邨と夢道の句は読んだほうが良いといわれました。だから私が一番はじめに好きになった俳人は三鬼です。楸邨の句はその時はまだ良くわからなかったのです。あとは俳人なら俳句は五分で作れなくっちゃいけない、とか。俳句を作るときは極力歳時記を見ないようにした方がいい、とか。Yくんは基本的に俳句は教えないという姿勢で句会を行っています。だから本当にちょっとしたアドバイスでも私にとっては大きなものでした。

Yくんは翼さんの弟子だけど、従来の俳句における師弟関係にアンチを唱えています。どこかの俳句誌には、プロフィールに「北大路翼にときどき師事」と書いていました。おいおい。でも句会の後の三次会で、私には入っていけない俳句談議を師弟二人でしていたりして、やっぱりちょっとうらやましいと思ってしまいました。


0 comments: