月光のかけら 大本義幸
月光が釘ざらざらと吐き出しぬ 八田木枯(*)に和して
月光が釘吐く長屋ざらざらと
水の上(へ)をツッツと月光渡りきし
月光が吐く釘拾いしはわれならん
厠紙かげすこしあるおぼろ夜の
萬愚節ブルーテントのなかまで月明
朧夜に取巻かれているホームレス
水に影それよりあわき四国かな
月光と戯れている草の絮
草の絮わが形代(かたしろ)というからに
死のごとく凪いでいるみずの上は
(*)『俳句』2008年12月号所載
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2008-12-14
10句作品テキスト 大本義幸 月光のかけら
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月光のかけら 大本義幸
月光が釘ざらざらと吐き出しぬ 八田木枯(*)に和して
月光をざらざらした釘にみたてるこの句の発想は、やや特異だが、それをナチュラルにうけとめて想を開いていったのは、さすが、大本さん。
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月光が釘吐く長屋ざらざらと
長屋に持ってきて江戸情緒に転じ。
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水の上(へ)をツッツと月光渡りきし
月光が「ツッツ」と動くのだから、月光の堅さがあり、そして多少は水面が動いていなければならない。これは秋の、河面か、湖面、あるいは京都の疎水、場所によって感じが違うが、瀬戸内海の凪の海面でしょうか?
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厠紙かげすこしあるおぼろ夜の
ここは、春の王朝風に駘蕩とした、場面に「厠紙」をだしてきたところ、ちょっと変わった光景、なるほど、ともおもうけど。
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萬愚節ブルーテントのなかまで月明
「萬愚説」に違和感があるが現実感覚がつよい。
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朧夜に取りかれているホームレス
これも不思議な風景、ホームレスやブルーテントがこの世ならぬものにおもわれる。
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水に影それよりあわき四国かな
本州からふるさと四国を想望するとき、この感覚はわかります。水に島影がうつって、それよりまだ故郷は遠い。
現実感覚と非現実感覚が、ときに遠近いれかわるところに痛みのようなこわれた(こわれそうな)風景がみえてくる。一句の中に、と言うより、句と句の間に。
大本さんの「構成」のあり方を見せて頂きました、面白かった。
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