2009-01-11

2009年新年詠(下)テキスト

2009年新年詠(2)

遺されしペンと少年二日はや    五十嵐秀彦
篝火の炸ぜたる闇や年変る     今村たかし
初場所やそして簀の子が干されてゐる上田信治
客絶えて七草粥の煮ゆるかな    宇志和音
四日はやよろけ出れば日向あり   太田うさぎ
羽づくろひ終へ初空へとびたてり  大野朱香
初詣エーゲ海のように焼そば    大畑 等
内湯から露天へと出る淑気かな   岡田由季
親知らず抜き切っていま淑気満つ  岡本飛び地
母と祖母との名前に子がつく鏡餅  越智友亮
初空へ波の飛沫のありつたけ    柿崎りん
日だまりに猫の寝てゐる初詣    金子 敦
丑年の牛に引かれて初詣      川崎益太郎
二日はや漏斗に吸はれ行く醤油   菊田一平
やり直しきかぬ齢や姫始め     北大路翼
元日の窓にはがらんだうの空    北川あい沙
目覚しの鳴らずじまひや大旦    久保山敦子
日溜のそのただ中の福寿草     熊谷 尚
あげたき子あげたくなき子お年玉  熊倉仔房
正月やマンゴーの種平べった    神野紗希
ぽつぺんのぽこんと母の記憶欠け  駒木根淳子 
ひかへ居らう吾輩は伊勢海老である 小林苑を
石鹸に牛の絵のある初湯かな    米男
初富士や丈の短き体操着      近 恵
猿の声アリアのごとし深雪晴    斎藤悦子
七種の屑透けてゐる塵袋      榊 倫代
一月一日が眠さうに歩いてゐる   島田牙城
書初のその一画が伸びすぎよ    鈴木不意
 喪中
初声や蒙と聞こえてなほ暗し    高山れおな
半分を越えた薺の音で行け     玉簾
初夢のみづみづしきを目覚めけり  茅根知子
伸びゆける夕映えに年新たなり   千葉皓史
初湯殿最初に濡るる足の裏     津田このみ
細胞のそれぞれに生き大旦     寺澤一雄
家の夜が楪に深まつてゆく     鴇田智哉
手羽中のやはく崩るる二日かな   中嶋憲武
弾初のチェンバロの音黒光り    長嶺千晶
初売の雑踏に身を流しこむ     中村國司
黒豆は遠くにありて淋しかり    中村十朗
初空の青みひつぱる老い支度    七風姿
日の本に鰹出汁あり宝船      西川火尖
またもとの歩幅にもどる四日かな  仁平 勝
あらたまの糖衣錠てふ慰めよ    野口る理
まづ初湯手足喜ばせてみるか    能城 檀
明けまして枯山水のしらたきです  長谷川裕
カワセミは青い点なり初写真    羽田野 令
新年は一秒の得うるう秒      蜂谷一人
わけまへの千円札や鏡割      星 力馬
人日や梅を咲かせてごらうじる   麻里伊
獅子舞のあとの塵浮く日差しかな  村上鞆彦
獅子頭雑踏斜に過ぎりけり     村上瑪論
椅子高く思へる仕事始かな     村田 篠
殺戮のにほひや鏡割る祖父に    山口珠央
日の丸って四面楚歌なの初御空   雪うさぎ
日面の雑木雑草初雀        陽 美保子

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