句集好き 4 『午後の窓』加倉井秋を
加倉井秋を かくらい・あきお
明治42年生まれ。東京美術学校建築科卒業。えびの高原ホテルなどを設計。
昭和11年頃から「馬酔木」「若葉」に投句。
昭和16年から「若葉」編集長。
昭和23年、同人誌「諷詠派」を安住敦、神田秀夫、志摩芳次郎、岸風三樓らと発行。昭和34年より「冬草」主宰。
昭和63年没。
『午後の窓』(昭和33年)は『胡桃』(昭和23)に続く第二句集。楠本憲吉の琅玕洞より刊行。縦幅のつまった特徴的な判型で、瀟洒な装丁。
「わたしはこの序文をかくために、『午後の窓』の原稿を四、五度読返した。何度でも面白く読返すことが出来た。(…)読んでゆきながら目にとまる句を書き抜いてゆくと、その句は知らぬ間に百句以上にも上つてしまった」(富安風生「序」より)
瓦斯タンク花の盛りはすぐ過ぎる
ごみ箱に乗りメーデーの列を見る
べニヤ板かついで通る河岸の櫻
豆腐屋の荷に抽斗がありて春
どう置いても栄螺の殻は安定す
常節を採るには海が明るすぎる
物差を見ても薄暑を感じる
思ひ出すには泉が大き過ぎる
海水着着てポス卜があるので曲る
雁渡る何か売る台組みはじめる
ぺンキ屋が書いても秋てふ字は淋し
燈台を思ひ出しをり蒲団干す
元日の敷居に腰掛けてをりぬ
枯野馬車日當りてゆくたのしさよ
春はまだ膝に黄ナ粉をこぼしても
屑鉄を積みても春の海辺たり
炎天や口から釘を出しては打つ
食べ終へても蜜柑箱といふいつまでも
そんな時刻石灯籠に蠅びつしり
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