2010-04-18

句集好き6『ウルトラ』高山れおな

句集好き 6『ウルトラ』高山れおな






高山れおな たかやま・れおな

1968年生まれ。1993年より「豈」に参加。2008年より「豈weekly」発行。

『ウルトラ』は1998年、沖積舎刊の第一句集。313句収録。
ビニールケース、表紙に二種のカラーペーパー、小口黄インク塗りと、非常に凝った装丁は日下潤一による。

"ウルトラ"はもとより。"超"とか"過激な"を意味する接頭辞・形容詞だが、集名とするにあたって特に念頭にあったのは、フランス王政復古期の極右反動の一派"超王党派(ウルトラ)"。これは大革命以前へ時間を逆戻りさせようと目論見、かえって七月革命を招いた貴族・聖職者たちで、天晴れな現実無視と時代錯誤の精神の持ち主だった。その名を借りて自ら馬のはなむけとした。(「後記」より)

七生の母へ馳走の火事明り
日の春をさすがいづこも野は厠

まぼろしの大河を前の御慶かな
雛壇の上より見れば戦かな
青き踏みゐる目黒区の主なホモ
ふらここや飛んで陽に入る核家族
総金歯の美少女のごとき春夕焼
海底(うなぞこ)の上下左右や五月場所
目の玉が宝石となる大暑かな
駅ごとに妻佇つてゐる旱かな
駅前の蚯蚓鳴くこと市史にあり
菊の香や眉間よりビーム出さうなり
大関がびつしり潜む秋の海
神は旅にわれは鰈をうらがへす
一号機輪廻なかばに蒲団干す
墨東に絵の餅を焼く絵の火かな
陽の裏の光いづこへ浮寝鳥
犀川にまぼろしの犀雪を来よ

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