2010-12-05

10句作品テキスト 土肥あき子 雫

 雫   土肥あき子

十二月一日雲の美しき
短日や船に錨のひとつづつ
航跡のたちまち消ゆる冬鴎
手袋を重ね話の噛み合はぬ
冬満月焔ときをり咲くやうに
曲りたるところ密なり冬銀河
寒林の背筋のなかを抜けにけり
雪しんしん夢のなかでは鳥けもの
雨の音あるいは枯野の燃ゆる音
猪罠に雫溜りてゐたりけり


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