真説温泉あんま芸者
第8回
サブカルの夜明けあるいは/しかし映画「ヘリウッド」再見
さいばら天気
「ヘリウッド」(1982年・長嶺高文監督)という映画を宅配レンタルサービスで見つけた。欧州の昔の名画は抜け落ちが目立つ「TSUTAYAディスカス」が、なんでこんな「どマイナー」な映画を、と吃驚しつつ、借りてしまった。
私がこの映画を観たのは、封切り当時だから、もう30年近く前になる。記憶は朦朧としているが、シネマ・プラセットという風変わりな特設映画館で観たのだと思う。
はい、シネマ・プラセット(ネットで拾ってきた画像です)。
吉祥寺パルコの屋上に設営された銀色のドーム、シネマ・プラセット。いや、ここで観たのは、同じ長嶺高文監督の80年作「歌姫魔界をゆく」か。この監督のデビュー作「喜談 南海変化玉」は78年。80年開店の吉祥寺パルコはまだこの世にない。
って、なんで、長嶺高文監督というおそらく今では知る人もあまりいないであろう監督の映画を3本立て続けに観ているのだ、私は?
それはそういう時代だったから。
という話はさておいて、このシネマ・プラセット、写真で見た感じよりも、実際にはかなり小さい。入ると、「小屋」くらいの印象だった。その後、渋谷に移設されたシネマ・プラセットでは、鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」(80年)、「陽炎座」(81年)あたりも観たはずだが(いや、前者は違う館か?)。と、まあ、記憶喪失のような話をしていてもしかたがない。
そのへんはネットで調べればわかりそうなものだが、シネマ・プラセットに関する情報は多くない(≫google)。知人に「ヘリウッド」の宣伝材料の制作に関わったという人もいるのだが、わざわざ聞く気はあまりしない。80年代の初め、こんなヘンテコリンな移動映画館があったということをここに記しておくだけでいいような気がする。
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さて、「ヘリウッド」。30年振りの再見。基本情報やあらすじは、こちらで済ませていただいて、どんな映画かというと、遠藤賢司演じる悪の親玉(子分は2人)対少女探偵団の戦い。当時、どんな感じで観たのかはほぼ忘れたが、ある程度ワクワクしながら観たのだろう。
で、いま、再び観て、どうかというと、なんだかとんでもなく安手。ロック・ミュージカル風のシーンが見せ場といえば見せ場。筋はこんがらがっている、というか、いいかげん、というか、ないに等しい。盛り上がりもない。そして驚いたことに、DVDではキャスト・スタッフのクレジットもない。
苔の恋愛を研究する科学者は、尾崎翠「第七官界彷徨」へのオマージュっぽいし、ヒトの内臓をいじくりまわすのは、前作「歌姫魔界をゆく」と同様。この監督の嗜好だろう。
ただ2点ほど、観るべきところがあった(当時はもっとあったのだろう)。
まず、遠藤賢司の歌のシーン。これはやはりいま観ても色褪せない。YouTubeで探したが、「ヘリウッド」の動画がないので、かわりに、1989年、テレビのスタジオライブ。
この「東京ワッショイ」が、映画「ヘリウッド」で二度ばかり演奏される。それはもうむちゃくちゃにカッコいい。
いいときは最高、悪いときは最低♪
じつにそうですよね。東京は。
そして、もうひとつ、観るべきところ。齋藤とも子がかわいいこと(≫画像検索)。
この2点は、ああ、観て良かったな、と思いましたよ。
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なんだか、まとまりがないのは、いつもどおりですが、関心のある方は、レンタルDVDで探してみてください。ただし、観て、怒らないでくださいね。
美少年がウンコを食べます。
ネズミの解剖シーンはおそらくホンモノです。
遠藤賢司の演技が「まあまあ巧く」見えるくらい、他の出演者の演技は全体に、あちゃー、です。
それをわかったうえで、観てみてください。おもしろいわけではないけれど、「こんな映画もあるんだな」という感慨のようなものが味わえるかもしれません。
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1980年代の初めは、そういう時代だったような気がします。その頃の若いもん(私もかろうじて含まれる)はアンダーグラウンドなもの、マイナーなもの、エスタブリッシュメントからは忌み嫌われそうなもの、バカバカしいものに、いまから思うと異様なほど興味を持っていた。
いわゆるサブカル、日本的用語としてのサブカルは、80年代に本格的に始まっていると思います(あまり知らないのに、こんなことを言ってしまっています)。
いま、自分のまわりの世代を見渡すとき、80年代をどんな年齢で迎えたかで、大きく違うということを感じます。私は80年代を、25~34歳で過ごしました。〔80年代=青春〕とは言えない。でも、例えば、この週俳の上田信治さんは、19歳で80年代を迎えています。
信治さんと私と、違うところはたくさんありますが、何が違うって、80年代の過ごし方が違うのだと、私自身は思っています。
1980年代、このとき、いろんなもの、おもに芸術(アート)観、エンターテイメント観が大きく変わった。それを論じたものがあれば読みたいのですが、まだ発見できていません。『1Q84』じゃなくて、そんな本、そんな研究、見つけたら教えてください。当時のこと、もうすこし思い出すかもしれません。
2011-01-16
真説温泉あんま芸者 第8回 サブカルの夜明け あるいは/しかし、映画「ヘリウッド」再見
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3 comments:
ツイッターで80年代の話になりました。
まとめ↓
http://togetter.com/li/90102
こんな感じでしょうか??
http://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%80%8C80%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E5%9C%B0%E4%B8%8B%E6%96%87%E5%8C%96%E8%AB%96%E3%80%8D%E8%AC%9B%E7%BE%A9-%E5%AE%AE%E6%B2%A2-%E7%AB%A0%E5%A4%AB/dp/486191163X
おお、アタリ、な感じ、します。
ありがとうございます。
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