2011-02-13

10句作品テキスト 鴇田智哉 耳の林

耳の林  鴇田智哉

咳をする光のなかに日が紛れ

椅子の背が倒れ枯野を越えてゆく

水かげろふこれから寒いときが来る

絵の鳥が動くぱちぱち鳴りながら

枯園は自分の耳が見たくなる

枝ばかりある水洟の林かな

耳といふ肉が雑木のこゑをきく

水涸れて人をまぢかに見てゐたる

だれもみなうしろの塔が気になりぬ

冬雲におほきな指の影がある

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