奉納 「100題100句2011」
西原天気 ゆび 100句
001:初
東一局初手から亀を鳴かせけり
002:幸
幸せとは何ぞやと問ふ田螺かな
003:細
チューリップ委細を省くこと大事
004:まさか
まさかこの局面で海胆すするとは
005:姿
姿見の裏は朧の夜なりけり
006:困 神野紗希に寄す
春眠にナウマン象が来て困る
007:耕
いつまでも見つめていたい耕耘機
008:下手
下手より梅を片手に男役
009:寒
阿寒湖に春がお越しになりまして
010:駆
竹馬の早駆けにして日脚伸ぶ
011:ゲーム
タカラ人生ゲームぞ春の野を進む
012:堅
このたびの目刺は堅しほろにがし
013:故
はるけしや故郷に磯巾着が揺れ
014:残
真昼ふとパンジーほどの残尿感
015:とりあえず
とりあへず瀬戸の入り日と飯蛸と
016:絹
春宵のピアノを聞けり絹のシャツ
017:失
失せ物は出でず蛙に目を盗られ
018:準備
かひやぐら準備のいまだ整はず
019:層
行く春や層なす菓子をたひらげて
020:幻
幻燈の鳥は横向き春ゆふべ
021:洗
てふてふや靴を洗ふに紐を抜き
022:でたらめ
でたらめな人生ですが桜餅
023:蜂
蜂蜜が錠剤となる日永かな
024:謝
感謝する心が大事うまごやし
025:ミステリー
春の蚊やゆつくり捲るミステリー
026:震
しやぼんだま毀れるまでを震へつつ
027:水
春の暮おなかがすいて水を飲む
028:説
めばる喰はせよ説明はそこそこに
029:公式
公式のひとつおぼえや柳絮とぶ
030:遅
燃えきつて灰のあたたか遅日なり
031:電
陽炎の三ノ輪へ向かふ電車かな
032:町
よろよろと春が来てをり鳩の町
033:奇跡
蠅生るる奇跡をこのところ思ふ
034:掃
ももちどり朝の掃除を欠かさずに
035:罪
かはうそに罪をかぶせて萵苣畑
036:暑
春きざす避暑地に人の子が生まれ
037:ポーズ
マネキンの春天あふぐポーズかな
038:抱
恋終えし猫を抱けば日の匂ひ
039:庭
庭球のボールの臍よ啓蟄の
040:伝
電線を声の伝はる春の暮
041:さっぱり
書を閉ぢて以降さつぱり囀らず
042:至
石鹸玉吹いてよこすや至近距離
043:寿
電球の寿命と思ふ梅月夜
044:護
蛤の這うては護国神社まで
045:幼稚
一年を通じてさくら幼稚園
046:奏
三月の奏楽堂で逢いませう
047:態
アネモネの絵にも描けない媚態かな
048:束
吊るし売る亀の子束子あたたかし
049:方法
方法のあれこれ味噌汁に若布
050:酒
するめピーナッツなども酒屋で春ゆふべ
051:漕
春風駘蕩漕ぎ手らのみな同じ服
052:芯
黄水仙いかにも芯の強さうな
053:なう
桃の花ひとのことばにうべなうて
054:丼
春きざすことカツ丼の玉子の黄
055:虚
春の雲サンドイッチに虚実なし
056:摘
戴冠のためのしろつめくさを摘む
057:ライバル
ライバルのアールとエルよかぎろへり
058:帆
帆をくれてやりたし今朝のあをむしに
059:騒
暮れかねて舊字が騒ぐ紙のうへ
060:直
直球で攻めてくるひと木の芽和へ
061:有無
けふ空は有無を言はさぬ霞み方
062:墓
別れ霜石屋が墓を抱き起こす
063:丈
日が沈む丈の揃ひし菜の花に
064:おやつ
日出づる国のおやつぞ黄金粉餅
065:羽
引鶴の機首がかたむく羽田へと
066:豚
豚小屋のひなたひのかげ交配期
067:励
北窓をひらくや励まされてゐる
068:コットン
コットン五〇パーセント決算大特価
069:箸
蕗味噌をちよつこし箸の先つぽに
070:介
春寒の肌を寄せ合ふ魚介類
071:謡
春日傘ゆれてすつかり歌謡曲
072:汚
春泥に汚れしストッキング脱げよ
073:自然
のどかなり自然観察家のめがね
074:刃
鱒に刃を乙女はまなこ見開きて
075:朱
春は来ぬ朱肉に触るるおやゆびに
076:ツリー
クリスマスツリーの仕舞ひ忘れかと
077:狂
薔薇の芽や癲狂院はいまむかし
078:卵
鶏卵に日の当りたる上野かな
079:雑
囀りのガラスを拭いてゐる雑巾
080:結婚
結婚せむ草萌の土手ころげつつ
081:配
つちふるや配電盤は外にある
082:万
春の海みなで万歳して笑ふ
083:溝
レコードの溝の終りは春の雨
084:総
下総を駆けて転んでスイトピー
085:フルーツ
なみなみとフルーツポンチ春の家
086:貴
きさらぎや高貴な人が象のうへ
087:閉
春障子閉づるおでこがかはいらし
088:湧
湧き出でて夢の中まで蝌蚪の紐
089:成
学成らず胸にぽつかり夏みかん
090:そもそも
そもそもが聖書に異本蝶に髭
091:債
債権者会議はつづく春の蠅
092:念
念ずればひとさしゆびは鶯に
093:迫
戸口まで流氷迫りくる気配
094:裂
てふてふの翅裂くやうな夜が来て
095:遠慮
栄螺焼く深謀遠慮まるでなく
096:取
春眠の果ての鳥取砂丘かな
097:毎
毎日が花鳥諷詠ときどき屁
098:味 寺山修司に寄す
つくづくに俳句は呪文海苔に滋味
099:惑
くれぐれも惑はさるなよ梅は梅
100:完
人それぞれ春はいろいろこれにて完
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1 comments:
感想を優夢さんの記事の方に付けてしまったようです。スイマセン^^;
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